皮膚の科学
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症例
リンパ浮腫肢に生じた皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の 1 例
宮﨑 梨香子望月 亮佐中谷 祥子高井 利浩坂本 攝
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2023 年 22 巻 1 号 p. 56-63

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抄録

86歳,女性。49歳時に子宮頸癌に対し手術,術後放射線療法が施行され,以後左下肢リンパ浮腫が生じ蜂窩織炎症状を繰り返していた。今回,左下肢に単発性の皮膚潰瘍を生じたが,外用薬で改善しなかったため皮膚生検を行い,原発性皮膚びまん性B細胞リンパ腫,下肢型の診断となった。慢性リンパ浮腫肢では蜂窩織炎を始めとする皮膚感染症が発症しやすいことが知られており,稀ながら悪性腫瘍も発生しうることが報告されている。リンパ浮腫のある部位は免疫不全状態であることが明らかになっており,それにより感染症や悪性腫瘍の発生母地になるとの機序が考えられている。リンパ浮腫に合併する皮膚悪性腫瘍としては血管肉腫が最も発生頻度が高く,Stewart-Treves 症候群として知られている。リンパ浮腫に合併した原発性皮膚悪性リンパ腫は本症例を含め21例の報告があり,リンパ浮腫と悪性リンパ腫発症に相関があることが示唆される。リンパ浮腫肢では血管肉腫だけでなく,多彩な悪性腫瘍の発生母地となりうることを念頭に鑑別を行う必要がある。 (皮膚の科学,22 : 56-63, 2023)

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© 2023 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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