皮膚の科学
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症例
成人スティル病の経過中に壊疽性膿瘡を発症した 1 例
爲政 萌子田中 文笹岡 佑輔出野 りか子浅川 麻里安原 裕美子
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2023 年 22 巻 2 号 p. 98-103

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抄録

81歳女性。当科初診約 1 ヶ月半前に成人スティル病と診断され,当院内科に入院しステロイド剤の内服で治療を開始された。その後メトトレキサート(MTX)内服を追加され,ステロイド剤を漸減中に両下腿に紫斑が出現したため当科を紹介されて受診した。当科初診時,両下腿伸側に浸潤を触れる点状紫斑が多発しており,病理組織像では真皮浅層に白血球破砕性血管炎の所見が認められた。免疫組織化学染色にて免疫グロブリンや補体の沈着を認めず,血液検査でも膠原病や全身性血管炎を疑う所見はなく,成人スティル病自体の病勢も改善傾向であったことから新規開始薬剤の MTX による薬剤性血管炎の可能性を考えた。MTX は成人スティル病に対して著効しており,紫斑も安静とステロイド外用剤にて改善を認めていたことから投与を継続した。下腿の紫斑は退院後に安静が保てず若干の再燃傾向を認めていたが,当科初診約 1 ヶ月半後に発熱と両下腿紫斑の急激な拡大と潰瘍化を認めた。内服ステロイド剤の減量に伴って MTX による薬剤性血管炎が再燃したと考え,MTX の中止とステロイド剤の増量を行ったが改善は得られなかった。再燃時の紫斑は病理組織像で血管炎の所見を認めず,各種培養検査から緑膿菌を検出し,壊疽性膿瘡と診断した。壊疽性膿瘡は血管炎などとの鑑別を要し,免疫抑制患者に生じやすく適切な治療介入が予後を左右するため,早期診断が重要である。 (皮膚の科学,22 : 98-103, 2023)

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© 2023 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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