皮膚の科学
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22 巻, 2 号
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症例
  • 松尾 彩子 , 佐藤 雅子 , 栁原 茂人 , 遠藤 英樹, 大磯 直毅 , 川田 暁 , 大塚 篤司 , 立石 千晴 , 橋本 隆 , 鶴 ...
    2023 年 22 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    84歳,女性。初診 2 ヶ月前より口腔内にびらんが出現し,約 1 ヶ月前より四肢・体幹を中心に小紅斑・水疱が出現した。左大腿水疱部の病理組織像では表皮下水疱,水疱内と真皮浅層血管周囲に好酸球の浸潤を認めた。CLEIA 法による抗 BP180 NC16a 抗体は陰性であった。蛍光抗体直接法では表皮基底膜部に IgG C3 の線状沈着を認め,正常ヒト皮膚を用いた蛍光抗体間接法では IgG 抗基底膜部抗体を認め,1M 食塩水剥離皮膚の表皮側に反応した。免疫ブロット法では患者血清の IgG BP180 NC16a LAD-1 に反応,IgA LAD-1 に弱く反応した。以上より抗 LAD-1 抗体陽性の粘膜類天疱瘡と診断した。抗 LAD1 抗体陽性の MMP の報告例の皮膚症状は中等症が多く,約半数の症例では MMP の高リスク群に相当する治療が必要であった。本症例でもプレドニゾロン 60 mg/日投与で治療を開始し,粘膜皮膚症状は著明に改善した。粘膜類天疱瘡の皮膚症状の発症には主として抗BP180 NC16a 抗体が関与し,粘膜疹の発症には BP180 C 末端と LAD-1 に対する抗体が関与していると考えられている。自験例のように BP180 NC16a LAD-1 抗体の両方に陽性の症例群は,MMP BP の両者の性質を持った疾患スペクトラムにあることが示唆された。 (皮膚の科学,22 : 85-91, 2023)

  • 江﨑 諒 , 吉崎 仁胤 , 田中 彰浩 , 岩平 紘佳
    2023 年 22 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    70歳,男性。右腎盂の尿路上皮癌に対してエンホルツマブ・べドチンの投与を開始された。投与開始の 9 日後より皮膚の瘙痒を自覚し,その後皮疹や発熱を認め,投与開始の14日後に当科を受診した。初診時には体幹四肢の間擦部優位にびまん性の紅斑を認め,内部には水疱を伴っていた。病理組織学的には表皮全層性の壊死を伴う interface dermatitis を認めた。エンホルツマブ・べドチンを休薬の上,クロベタゾールプロピオン酸エステルの外用を行い,皮疹は 2 週間で改善した。再投与後に皮疹の再燃をたびたび認めたが,皮疹はクロベタゾールプロピオン酸エステルを外用することで改善した。また,ジフルプレドナート軟膏の予防的な外用を行うことで,皮疹の再発が少なくなり,エンホルツマブ・ベドチンの投与を継続できている。エンホルツマブ・べドチンは尿路上皮癌の三次治療として新規に上市した抗 Nectin-4 抗体とモノメチルアウリスタチン E の抗体薬物複合体であり,皮膚障害を生じやすい薬剤として認識する必要がある。 (皮膚の科学,22 : 92-97, 2023)

  • 爲政 萌子 , 田中 文 , 笹岡 佑輔, 出野 りか子 , 浅川 麻里 , 安原 裕美子
    2023 年 22 巻 2 号 p. 98-103
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    81歳女性。当科初診約 1 ヶ月半前に成人スティル病と診断され,当院内科に入院しステロイド剤の内服で治療を開始された。その後メトトレキサート(MTX)内服を追加され,ステロイド剤を漸減中に両下腿に紫斑が出現したため当科を紹介されて受診した。当科初診時,両下腿伸側に浸潤を触れる点状紫斑が多発しており,病理組織像では真皮浅層に白血球破砕性血管炎の所見が認められた。免疫組織化学染色にて免疫グロブリンや補体の沈着を認めず,血液検査でも膠原病や全身性血管炎を疑う所見はなく,成人スティル病自体の病勢も改善傾向であったことから新規開始薬剤の MTX による薬剤性血管炎の可能性を考えた。MTX は成人スティル病に対して著効しており,紫斑も安静とステロイド外用剤にて改善を認めていたことから投与を継続した。下腿の紫斑は退院後に安静が保てず若干の再燃傾向を認めていたが,当科初診約 1 ヶ月半後に発熱と両下腿紫斑の急激な拡大と潰瘍化を認めた。内服ステロイド剤の減量に伴って MTX による薬剤性血管炎が再燃したと考え,MTX の中止とステロイド剤の増量を行ったが改善は得られなかった。再燃時の紫斑は病理組織像で血管炎の所見を認めず,各種培養検査から緑膿菌を検出し,壊疽性膿瘡と診断した。壊疽性膿瘡は血管炎などとの鑑別を要し,免疫抑制患者に生じやすく適切な治療介入が予後を左右するため,早期診断が重要である。 (皮膚の科学,22 : 98-103, 2023)

  • 飯田 裕里佳 , 熊谷 淳 , 小川 聡, 浅井 沙月, 石原 美佐 , 橋本 公夫 , 川上 尚弘 , 鷲尾 健
    2023 年 22 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    42歳,女性。 1 年前より左前腕に小結節を認め緩徐に増大傾向にあったため当科を紹介受診した。 初診時直径 10 mm 大の表面やや角化を伴ったドーム状に隆起した弾性硬の褐色小結節を認め,全摘手術を施行した。真皮浅層から深層にかけて球状の腫瘤を認め真皮直下では組織球が密に集簇し,Touton 型や異物型の多核巨細胞が多数見られ,また泡沫様細胞も混在し黄色肉芽腫と類似していた。真皮深層では巨細胞はみられず,花むしろ模様に紡錘形の核をもった細胞の増殖を認めた。 CD68 染色は両部位で陽性であったが,表皮直下の真皮浅層では染色様態が円形に近く,真皮深層では紡錘形に染色された。Factor XIIIa は真皮深層でははっきりと陽性であったが,真皮浅層の泡沫様細胞のみられる部位では染色が減弱していた。皮膚線維腫と黄色肉芽腫との鑑別について,これらの 2 つの腫瘍は共通した発生母地が存在するのではないかと考えた。 (皮膚の科学,22 : 104-108, 2023)

  • 塩入 桃子 , 藤井 洋介, 北尾 陸将, 田井 志正 , 小倉 香奈子 , 長野 徹
    2023 年 22 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    81歳,女性。初診 3 年前に右下腹部に自覚症状のない結節が出現,徐々に増大し乳頭腫状変化を認めるようになった。全摘生検を行った結果,真皮から皮下脂肪織にかけて密な膠原線維増生と異型紡錘形細胞,多核巨細胞のまばらな増殖,成熟脂肪細胞を認めた。免疫染色では CD34p16 陽性でKi-67 index 10%であり Pleomorphic lipoma もしくは Pleomorphic broma 両者の特徴を有していた。Pleomorphic lipoma Pleomorphic broma は予後良好な良性腫瘍であり,Pleomorphic lipoma は軟部組織腫瘍,Pleomorphic broma は皮膚腫瘍に分類される別疾患と考えられている。 一方,両者は多彩な病理組織像・バリアントを示し,時に鑑別が困難なことも少なくない。また近年,癌抑制遺伝子である RB1 遺伝子欠損が両疾患で確認されている。自験例は最終的にPleomorphic broma と診断したが,典型例はともかく中間に位置する病態が存在する可能性があり得ることも考慮に入れ,症例の蓄積を待つべきである。 (皮膚の科学,22 : 109-113, 2023)

  • 濱口 麻衣 , 大原 裕士郎 , 中嶋 万季, 大磯 直毅 , 明石 雄策 , 田村 孝雄
    2023 年 22 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    67歳,男性。 2 1 ヶ月前から肺癌のためニボルマブで加療していた。 2 ヶ月前より全身に紅斑・緊満性水疱が出現し改善しないため当科に紹介受診となった。臨床・検査・病理所見から水疱性類天疱瘡と診断した。ステロイド全身投与で皮疹は寛解した。免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブとペムブロリズマブは高い抗腫瘍効果を持つが,様々な臓器に免疫関連有害事象(immunerelated adverse eventsirAE])が生じうる。ニボルマブとペムブロリズマブ投与中に水疱性類天疱瘡が生じた本邦20例をまとめたところ,原疾患の悪性腫瘍が比較的予後良好な経過を示すことが明らかとなった。免疫チェックポイント阻害薬と水疱性類天疱瘡の関連についてさらなる症例の集積が求められる。 (皮膚の科学,22 : 114-118, 2023)

  • 小野 祥子 , 金田 一真 , 森脇 真一
    2023 年 22 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は64歳,男性。初診15年前より近医にて尋常性乾癬と診断されステロイド外用薬やシクロスポリン内服で加療されていた。初診 3 ヶ月前頃より四肢関節痛が出現し,乾癬性関節炎が疑われ当科紹介となった。体幹,下肢を中心に痂皮を伴う紅斑がみられ,病理組織学的に過錯角化,表皮突起の棍棒状延長を認めた。手指,手首,足首や膝には関節痛があり,血液検査ではリウマトイド因子陰性であった。CASPAR 分類をふまえて乾癬性関節炎と診断した。初診 1 ヶ月後から TNF-α 阻害薬であるセルトリズマブ ペゴルを開始したところ,初診 6 ヶ月後に皮膚・関節症状ともに寛解に至った。患者希望によりセルトリズマブ ペゴルを休薬したが,その 5 ヶ月後に関節症状が再燃した。セルトリズマブ ペゴルを再開したところ皮膚・関節症状ともに改善したが,再開 7 ヶ月後,掌蹠に膿疱や紅斑,落屑が出現した。病理組織学的には角層下に好中球性膿疱がみられ,掌蹠以外の皮疹の再燃がないことから TNF-α 阻害薬による逆説的反応(膿疱性皮疹)と考えた。セルトリズマブ ペゴルを中止し,グセルクマブに変更したところ,膿疱性皮疹は徐々に軽快した。TNF-α 阻害薬投与中に乾癬様皮疹や膿疱性皮疹を生じることがあり逆説的反応と呼ばれる。今回我々は,乾癬性関節炎に対するセルトリズマブ ペゴル投与中に逆説的反応が生じた 1 例を経験した。セルトリズマブ ペゴルによる逆説的反応の報告はまだ少ないが,各TNF-α 阻害薬間の逆説的反応の報告数の違いは観察人年による差と考えられている。TNF-α 阻害薬使用時はどの薬剤であっても逆説的反応に留意する必要があると考える。 (皮膚の科学,22 : 119-125, 2023)

  • 森川 和音 , 大塚 俊宏 , 森脇 真一
    2023 年 22 巻 2 号 p. 126-132
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 58歳女性。前医で右臀部の腫瘤をメルケル細胞癌(Merkel cell carcinoma ; MCC)と診断され,当科紹介受診となった。骨盤内リンパ節転移を伴っており,アベルマブ投与,放射線療法を行うも効果に乏しく癌専門病院へ紹介となった。紹介先での CarboplatinCBDCA),Etoposide VP-16)による化学療法も奏効せずターミナルケア専門病院へ転院となった。症例 2 87歳女性。 前医で MCC と診断された右鼻背部原発腫瘍の増大,頸部リンパ節や右頬部への転移が存在したため当科紹介受診となった。アベルマブの投与を開始し,右頬部転移巣の姑息的切除術を施行したが,腫瘍は増大した。癌専門病院へ紹介し,CisplatinCDDP),VP-16 による化学療法で腫瘍は一時縮小したが,再度病勢が増悪し死亡した。今回経験した症例は切除不能な進行期 MCC であり,アベルマブの適応となる症例であった。しかし,アベルマブの奏効率に関する過去の報告と比較すると,自験例はいずれもアベルマブが奏効しにくい症例であった可能性が考えられた。 (皮膚の科学,22 : 126-132, 2023)

  • 山田 昌弘 , 加藤 威 , 塚本 雄大, 前田 泰広 , 中西 健史 , 藤本 徳毅
    2023 年 22 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    71歳,男性。水疱性類天疱瘡に対して近医でプレドニゾロン 20 mg を投与されたが,症状が改善せず,当科を紹介された。入院後,プレドニゾロン 50 mg1mg/kg)で治療を開始したが改善がなく,大量ガンマグロブリン静注(IVIG)療法,ベタメタゾンへのステロイドスイッチ,ステロイドパルス療法と順次治療法を変更しても,改善はみられなかった。てんかんの既往で内服していたフェニトインとフェノバルビタールの CYP3A4 誘導によりステロイド剤の効果が減弱していると考え,これら 2 剤をレベチラセタムに変更したところ改善に転じた。我が国では,CYP3A4 を強力に誘導してステロイド剤の効力を減じるリファンピシン投与下において,ステロイドの効果残存率をmetabolic clearance rateMCR)の逆数と見て,ステロイド必要量に MCR を乗じる形で増量し,治療効果を維持するステロイド投与法が支持されている。自験例でフェニトインとフェノバルビタールの併用によりステロイドパルスの効果が大幅に減弱していると推測できることから見て,CYP3A4 を誘導する薬剤を多剤併用する場合は,相乗的にステロイド減弱効果が増強するため,ステロイド増量だけによる治療効果を期待することは困難と考えられる。てんかん患者に対しては CYP3A4 を誘導する抗てんかん薬が多剤併用されることも多い。そのような患者のステロイド治療の開始に当たっては,ステロイド効果減弱への対処法として,自験例でも有効であった抗てんかん薬の変薬を実施すべきと考えた。 (皮膚の科学,22 : 133-138, 2023)

  • 藤島 智慧子 , 小亀 敏明 , 加来 洋 , 中島 沙恵子 , 椛島 健治
    2023 年 22 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    症例は子宮筋腫の既往のある49歳女性。 3 年前から出現した前胸部の多発紅色局面を主訴に来院した。病理組織では,真皮の浅層から中層に,島状に血管内皮細胞の増殖像を認めた。増殖細胞に核異型や核分裂像はみられなかった。免疫組織学的染色では,増殖している血管内皮細胞で erythroblast transformation-specic-related gene が陽性で,周皮細胞で α-smooth muscle actin が陽性であった。以上より,本症例を房状血管腫と診断した。その後,徐々に増大し疼痛も増強してきたため,低用量アスピリンの内服を開始した。内服開始から速やかに色調と疼痛が軽快し,内服開始から 9 ヶ月ごろには皮疹が消失したため,18ヶ月で内服を終了した。内服終了から 5 ヶ月経過しても,再燃なく経過した。房状血管腫はおもに 5 歳未満の小児に好発する良性の脈管増殖性腫瘍であるが,成人発症例も散見される。自然消退は稀であり,薬物内服療法,放射線照射,外科的切除などが試みられる。 うち,抗血小板薬の治療効果は報告によってばらつきがあるが,本症例では低用量アスピリンが著効した。房状血管腫のうちどのような症例で抗血小板薬が有効であるのか,またアスピリン単剤の治療効果がどの程度であるのかは明らかでなく,更なる症例の蓄積が待たれる。 (皮膚の科学,22 : 139-144, 2023)

  • 鄭 韓英, 大塚 俊宏 , 金田 一真 , 福永 淳 , 森脇 真一
    2023 年 22 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/07
    ジャーナル 認証あり

    96歳,女性。約 3 年前より右下腿に紅斑を認めていた。ステロイド剤を外用するも紅斑が消退しないため当科に紹介受診となった。初診時,右下腿伸側に 55×38 mm 大の鱗屑を伴うやや境界不明瞭な楕円形の紅斑を認めた。ダーモスコピーでは乳白色∼淡紅色の背景に,dotted vesselsglomerular vessels,薄い鱗屑を認めた。皮膚生検を施行し,病理組織学的に表皮内に類円形の核を持った大型で明るい pagetoid cell を認め,一部に異常角化細胞,錯角化も認めた。乳房外 Paget 病や上皮内悪性黒色腫との鑑別のため,組織化学染色と免疫組織化学染色を施行したところ,PAS 染色陽性(ジアスターゼ消化性),AE1/AE3CK5/6p63 は陽性であった。Alcianblue 染色,CK7GCDFP-15S-100CEA はいずれも陰性であった。以上の結果より,自験例を Pagetoid Bowen 病と診断した。患者が腫瘍切除を希望せず,また超高齢者であることから,治療としてイミキモド外用を行うこととした。イミキモド外用により紅斑は淡くなり,消退傾向を認めた。再度皮膚生検を施行し,病理組織学的評価を行ったところ,表皮内の pagetoid cell は減少しており,表皮内と真皮には著明なリンパ球浸潤が認められた。浸潤しているリンパ球のうち,CD8 陽性細胞の増加が著明であった。イミキモド外用前後の CD8 陽性細胞の経時的変化の結果から,イミキモドが TLR-7 を介した自然免疫系の刺激を介して細胞障害性 T 細胞を活性化したことによる抗腫瘍効果が推察された。 (皮膚の科学,22 : 145-151, 2023)

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