皮膚の科学
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症例
Balloon cell melanoma の 1 例
中谷 佳保里上尾 礼子野村 祐輝清原 隆宏
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2023 年 22 巻 3 号 p. 181-186

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抄録

86歳,男性。発症時期不明の右上腕の約 1cm大の黒色結節から出血したため近医を受診した。2 mm マージンで全切除生検が施行され,メラノーマの診断で当科を紹介受診した。切除標本では,表皮から真皮中層にかけて好塩基性の結節性病変がみられた。表皮下層には類円形の淡明細胞が不規則に増殖しており,真皮には好酸性の細胞質を有する類上皮細胞の増殖がみられた。結節中央では大型で明るい泡沫状の細胞質を有する balloon cell の増殖がみられた。いずれの細胞も大小不同で核異型を伴っていた。免疫染色では,類上皮細胞では S-100 蛋白,HMB45Melan-A 陽性,balloon cell では S-100 蛋白,Melan-A 陽性であり,balloon cell melanoma と診断した。断端陰性であり,全身検索で遠隔転移を疑う所見はなかったため追加切除はせず,インターフェロン β 局注にて経過観察していた。しかし17ヶ月後に腫瘍切除瘢痕から中枢側に 7mm大の淡青色の皮下結節が出現した。切除生検で balloon cell melanoma in-transit 転移であった。遠隔転移の所見はなく,その後もインターフェロン β 局注をしばらく継続した。その後の経過観察中には再発転移はなく,経過中に肺炎になり死亡された。Balloon cell melanoma はまれな病型であり,balloon cell はメラノーマの進行過程において生じる可能性があると推察される。 (皮膚の科学,22 : 181-186, 2023)

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© 2023 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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