2023 年 22 巻 4 号 p. 281-285
50歳男性,糖尿病性腎症に対して生体腎移植後,免疫抑制薬内服管理中に COVID-19 を発症した。 重症化し人工呼吸器管理となったがその後症状改善し,紹介元に転院となった。転院時より右頬部発赤,腫脹,熱感がみられた。CT で右急性副鼻腔炎からの炎症波及による右頬部蜂窩織炎の診断で副鼻腔手術目的に当院耳鼻科へ紹介された。抗菌薬治療に不応であり当科紹介受診となった。また,副鼻腔術後に左片麻痺が出現した。発症不明の脳梗塞として加療されていたが,副鼻腔および皮膚生検組織よりムコールが検出され,脳梗塞とあわせて鼻脳型ムコール症と診断された。アムホテリシンB 投与にて炎症反応は低下したが,脳梗塞域は拡大し,発症約 1 ヶ月後に永眠された。免疫抑制状態のある患者においては本症を念頭におき,積極的に皮膚生検を行うべきである。 (皮膚の科学,22 : 281-285, 2023)