2023 年 22 巻 4 号 p. 309-314
64歳女性。汎発性膿疱性乾癬に対してセクキヌマブ投与中,KL-6 が上昇し間質性肺炎を発症した。 セクキヌマブによる薬剤性間質性肺炎が疑われ,投与中止にて間質性肺炎は改善するも,その後皮疹が再燃しグセルクマブ導入となった。現在皮疹は改善し,KL-6 上昇や間質性肺炎の再発は認めていない。乾癬患者において生物学的製剤使用中に KL-6 の上昇を認めた場合,『偽陽性』,『感染症による間質性肺炎』,『乾癬に伴う間質性肺炎』,『生物学的製剤による薬剤性間質性肺炎』の鑑別が必要となる。KL-6 偽陽性例では,間質性肺炎の所見がなくても微小な肺胞障害の可能性を念頭に,定期的なフォローが必要となる。乾癬に伴う間質性肺炎では,製剤の増量により皮疹のみでなく肺炎も軽快することがあり,薬剤性間質性肺炎との鑑別が重要である。生物学的製剤による薬剤性間質性肺炎の診断がついた場合,製剤の中止が必要となるが,必ずしも異なるクラスの製剤へのスイッチでの安全性は示されていない。ただし,KL-6 は間質性肺炎以外に肺腺癌,乳癌,膵臓癌などの腺癌や,肺扁平上皮癌でも上昇することが知られており,悪性腫瘍合併例では注意が必要である。SP-D の測定,画像検査,乾癬の病勢の評価などからこれらの病態を鑑別し,製剤の投与継続の可否についての検討が重要となる。 (皮膚の科学,22 : 309-314, 2023)