皮膚の科学
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症例
トコジラミ刺症と疥癬を併発した後天性反応性穿孔性膠原線維症の 1 例
尼木 麻実夏秋 優金澤 伸雄
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2023 年 22 巻 4 号 p. 303-308

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抄録

症例は糖尿病がある65歳の男性。初診の約 2 ヶ月前より四肢に瘙痒を伴う丘疹が出現し,改善しないため当科を紹介された。患者が自宅の寝室で採取して持参した虫がトコジラミと同定されたため,トコジラミ刺症と診断した。トコジラミの駆除を指示し,ステロイド外用を開始したが皮疹は改善せず,手指の皮疹からヒゼンダニが検出されたため,疥癬の合併が判明した。疥癬はフェノトリン外用で改善したが,瘙痒性丘疹が残存したため皮膚生検を実施したところ,病理組織学的に痂皮を付着した潰瘍,真皮の炎症細胞浸潤を認め,一部に膠原線維の経表皮性排泄像が見られたことから,後天性反応性穿孔性膠原線維症(Acquired reactive perforating collagenosis,以下,ARPC)と診断した。 殺虫剤を用いたトコジラミの徹底した駆除とステロイド外用にエキシマライト照射を併用することで,皮疹は改善した。症状出現の契機となったトコジラミ刺症はわが国において増加傾向にあり,被害拡大が続いている。原因不明の虫刺症を診察した場合は,トコジラミ刺症の可能性も念頭に置く必要がある。一方,ARPC の病態は未だ不明な点も多く,併存症による変化も合わさり複雑な病態を形成していると考えられる。自験例のような激しい瘙痒を伴う虫刺症は ARPC の誘発要因となる可能性があり,皮疹に対する治療はもちろんのこと,虫刺症への対策,患者指導も含めて治療を行うことが望ましいと考えられる。 (皮膚の科学,22 : 303-308, 2023)

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© 2023 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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