2006 年 5 巻 2 号 p. 178-182
31歳,女性。二分脊椎に伴う両足の内反尖足がある。初診の約半年前に左鼡径部の母指頭大の皮下腫瘤に気付いた。同腫瘤は急速に増大し,初診の1ヵ月前には腫瘤表面よりリンパ液の漏出と左下肢の蜂窩織炎が出現したため,大阪府立成人病センター整形外科を受診。針生検にて悪性黒色腫の転移が疑われ,当科へ紹介された。当科初診時には左鼡径部に直径8cm,高さ4cm,表面に一部びらんを伴う赤色腫瘤をみとめ,その下床に皮下硬結を触知した。左足底には強度の胼胝があり,その内部に疣贅様の小腫瘤をみとめた。疣贅様部分の生検にてamelanotic melanomaの所見がみられた。本症例は本邦に多い末端黒子型黒色腫の発症要因として慢性的な外的刺激を示唆する1例と考えた。