皮膚の科学
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症例
中型の先天性色素性母斑上に生じた悪性黒色腫の1例
楠谷 尚加茂 理英上奥 敏司曽和 順子井上 敦司上原 慎司石井 正光
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ジャーナル 認証あり

2009 年 8 巻 2 号 p. 211-216

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抄録

55歳,女性。出生時より左乳房から胸骨部にかけて色素性母斑が存在した。当科に受診する約1ヵ月前に母斑内に約5mmの腫瘤形成を認め,徐々に増大してきた。さらに左腋窩に皮下腫瘤を自覚して前医を受診し,当科に紹介された。リンパ節転移を伴う悪性黒色腫と診断し,母斑を含めた腫瘍切除術と腋窩リンパ節郭清術を施行した。術後約1ヵ月の経過で骨転移を認め,さらに肺転移と肝転移を生じ,初診より約4ヵ月で永眠した。先天性色素性母斑のうち,巨大先天性色素性母斑では幼少時に悪性黒色腫が発生することがよく知られている。小型から中型の先天性色素性母斑では思春期以降に悪性黒色腫発生があるとされ,予防的切除が推奨されている。自験例は母斑表面に疣状変化が強く,腫瘤形成に気づきにくかったことや,女性の乳房に母斑が存在したことによる羞恥心から医療機関の受診が遅れ,急速な転帰をとったと推測した。先天性色素性母斑を診察する際において,サイズにより悪性黒色腫が発生する頻度や時期が異なることから,先天性色素性母斑の治療時期や内容についての適切な患者への説明と指導が必要と考えた。

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© 2009 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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