皮膚の科学
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8 巻, 2 号
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カラーライブラリー
研究
  • 岩田 大輔, 黒川 一郎, 山中 恵一, 松島 佳子, 出野 裕, 水谷 仁
    2009 年 8 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
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    水道水電解水を生成して手指を洗浄する装置を開発し,除菌効果,持続性,安全性,およびin vitroにおける殺菌効果の検討を行った。洗浄による菌の減少率は医療従事者(n=46)で55%,看護学生(n=12)で41%,養護教員(n=12)で50%であった。電解水の有効性は洗浄5分後,30分後で水道水に比べ有意な菌数の減少が見られ,持続効果を認めた。標準菌株(103CFU/ml)を用いた殺菌力は,表皮ブドウ球菌,緑膿菌では接触1分,大腸菌では5分,黄色ブドウ球菌では10分後から発育の抑制を認めた。水道水電解水による洗浄は十分な除菌効果と持続性,安全性があり,環境負荷を軽減し,医療や福祉などの分野で期待できる。
  • 木村 有太子, 松葉 祥一, 千見寺 貴子, 春名 邦隆, 鎌野 マヤ, 須賀 康, 高森 建二
    2009 年 8 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    中等症以下のアトピー性皮膚炎(AD)患者28例を,吉草酸ベタメタゾン軟膏治療群(A群)とロラタジン錠併用治療群(B群)に割り付け,4週間治療前後の痒みのVASとSCORAD index,血清sIL-2R,TARC,CTACK値の変化を検討した。VASとsIL-2R,TARCはB群でのみ有意な減少を示した。SCORAD indexはB群においてより顕著で有意な減少を示した。SCORAD indexと血清TARC値の間には有意な正の相関が認められ,血清TARC値は臨床症状のマーカーとして有用であると考えられた。また,AD治療におけるステロイド外用薬とロラタジン併用の有用性についても確認された。
  • 樋上 敦, 井階 幸一
    2009 年 8 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    当院外来で診察した疥癬患者23例において血清IgE値を測定したところ,正常値群11例と異常高値群12例との間で疥癬検出時の皮疹の重症度に大きな差はなかったにもかかわらず,異常高値群では診断確定までに長い時間を要したことが判明した。血清IgEが湿疹病変を生じやすい,いわゆるアトピー体質を反映していると仮定すると,血清IgE高値の患者は,少ないダニにより症状が発現しているため診断が困難である,という可能性が示唆された。感染症の皮膚症状は一般に宿主と寄生体の相互作用により成立するといわれており,疥癬においても,臨床症状の発現がダニの数のみならず患者自身の体質に負うところが大きいと考えられた。
症例
  • 下浦 真一, 中野 英司, 藤原 進, 高井 利浩, 村田 洋三, 熊野 公子
    2009 年 8 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    52歳男性。左側腹部と右下腿の限局性強皮症に対し,ジフルプレドナートを外用して1ヵ月ほどたった頃から全身にそう痒を伴う紅斑と丘疹,小水疱が多発した。外用していなかった背部と肛門周囲にも皮疹が生じた。ジフルプレドナート軟膏のパッチテストでは48時間後の判定で陰性,72時間後の判定で1+,7日後の判定で3+と,陽性所見が遅れて出現した。成分パッチテストではジフルプレドナート軟膏に含まれる非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテル(1%, 0.1% pet)が3+であった。同物質による接触皮膚炎症候群と診断した。
  • 土本 紗世, 兪 明寿, 櫟原 維華, 落合 宏司, 大津 詩子, 森脇 真一, 西嶋 攝子, 清金 公裕
    2009 年 8 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    61歳,女性。アナフィラクトイド紫斑の診断のもとに下肢の安静とステロイド剤の大量全身投与,第XIII因子製剤投与などにて入院加療を行っていた。紫斑の消退後に血液凝固能の異常が出現し,深部静脈血栓症と肺塞栓症の合併が発見された。肺塞栓症は深部静脈血栓症の重要な合併症であり致死的であるが,本症例では一時的下大静脈フィルターと抗凝固療法にて治療を行い,死には至らなかった。また,本症例においてはアナフィラクトイド紫斑に対する下肢の安静にくわえて,肥満(身長150cm,体重58kg)やステロイド性糖尿病という深部静脈血栓症の発症に関わる危険因子を有しており,これらが血栓形成に関与したと考えられた。
  • 鵜飼 恭子, 大東 淳子, 西藤 由美, 竹中 秀也, 加藤 則人, 岸本 三郎, 森岡 茂己, 細井 創
    2009 年 8 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
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    17歳,男性。13歳時に仙骨部のEwing肉腫を発症し,15歳時に仙腸骨部腫瘍切除術およびinstrumentation(金属ボルト及びプレートによる固定術)を施行された。初診の半年前より腫瘍切除による両坐骨神経麻痺から臥床生活となった。仙骨部の金属ボルトの突出した部位に一致した潰瘍を認め,当科を受診した。ボルトの摘出は難しいと判断し,保存的処置を行うことにした。処置にあたり,金属ボルトが骨盤を支えるプレートに連続していることから感染に対する対策が必要と考えた。連日,当科において処置を行い,可能な限りの除圧を行った。腫瘍死に至るまでの約8ヵ月間,局所に感染を起こすことなく経過した。
  • 渡辺 智久, 加藤 大輔, 神谷 受利
    2009 年 8 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
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    57歳,男性。カルバマゼピン(レキシン®)内服開始38日後に皮疹が出現。Drug-Induced Hypersensitivity Syndrome(DIHS)の診断で第16病日に入院。DICを合併したがステロイドミニパルスで改善,免疫グロブリンは使用しなかった。その後,DIHSの再燃は無かったが,多剤感作を生じた。クロナゼパム(リボトリール®)内服で皮疹が出現,腎機能低下・血小板数の減少もあり,入院加療。ステロイドのみで改善した。市販薬やセフポドキシム プロキセチル(バナン®)でも薬疹が生じた。カルバマゼピンなどについて2回行ったパッチテストでは,いずれもその後に全身に紅斑が出現し,DIHSの皮疹の再燃と考えられた。
  • 安部 正通, 矢上 晶子, 中川 真実子, 佐野 晶代, 松永 佳世子
    2009 年 8 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    当科で経験したStevens-Johnson syndrome(SJS)の2例について,HLAの遺伝子マーカーの検討を行ったので報告する。症例1は53歳,女性。内服誘発試験の結果,アロプリノール,クラリスロマイシン,ロキソプロフェンナトリウムの3剤同時服用によるSJSと診断した。遺伝子解析の結果,HLA-B5801が検出された。症例2は54歳,男性。カルバマゼピンに対する薬剤誘発リンパ球幼弱化試験が陽性であり,カルバマゼピンによるSJSと診断した。遺伝子解析ではHLA-B1502は検出されなかった。
  • 大橋 苑子, 荒井 利恵, 政次 朝子, 太田 深雪, 堀口 裕治
    2009 年 8 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    62歳,男性。5年来の掌蹠の汗疱状皮膚炎が強いそう痒を伴って全身に拡大した。初診時,躯幹に紅斑と丘疹,掻破によるびらんと小さな潰瘍がみられ,四肢の中枢側には苔癬化した局面と痒疹様の皮疹がみられた。大きな水疱はなかった。掌蹠には汗疱様の小水疱や血疱,および小型の水疱やびらん面が分布していた。組織学的には陳旧性の水疱蓋下面にghost basal cell(核の抜けた好酸性に染色される基底細胞)が配列し,再生表皮には表皮内のように見えるが複雑な経路で真皮に連絡する新しい水疱がみられた。真皮上層には好酸球の強い浸潤がみられた。直接蛍光抗体法により表皮基底膜部にはIgGとC3の線状の沈着がみられた。またELISA法では患者血清中に抗BP180抗体が確認された(インデックス値320)。異汗性類天疱瘡が全身に拡大したものと診断し,プレドニゾロン(初期量30mg/日),ミノサイクリン(150mg/日)およびニコチン酸アミド(900mg/日)の併用療法を開始したところ,皮疹は数日の経過で消退した。本症例は異汗性類天疱瘡が何らかの機序で増悪し,全身に拡大したものと考えた。
  • 太田 安紀, 杉原 昭, 水野 可魚, 森 茂生, 堀尾 武, 岡本 祐之
    2009 年 8 巻 2 号 p. 168-172
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    75歳,女性。初診の2週間前より四肢に紅斑と水疱が出現し,徐々に増悪してきたため当科を紹介された。初診時,体幹や四肢にそう痒を伴う紅斑と水疱がみられた。組織学的に表皮下水疱があり,蛍抗体直接法にて基底膜部にC3の線状の沈着を認めた。抗BP180抗体が陽性であり,水疱性類天疱瘡(BP)と診断した。プレドニン®(プレドニゾロン)40mg/日の内服治療を開始したところ,7日目に吐血,嘔吐とともに食道粘膜の吐出を認めた。上部消化管内視鏡検査にて食道入口部から食道胃接合部まで,全周性で連続性に粘膜の剥離を認めた。ステロイドパルス療法により皮疹とともに粘膜病変も2週間で軽快した。本症例のようにBPで粘膜の吐出をきたすことは稀であるが,BPにおける食道粘膜病変は文献的に検索すると,これまでの認識より多く,十分な注意が必要であると考えた。
  • 加藤 威, 藤本 徳毅, 植西 敏浩, 田中 俊宏
    2009 年 8 巻 2 号 p. 173-176
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    75歳,女性。口腔内の多発性びらんのため当科を受診した。血液検査で抗デスモグレイン1と抗デスモグレイン3抗体Indexの上昇を認めたが,病理組織検査でも蛍光抗体法でも自己免疫性水疱症を疑う所見を認めず,口腔扁平苔癬と診断した。治療としてベタメタゾンの内服とDDS,エトレチナート内服,タクロリムス軟膏外用を行い症状は改善した。経過中,抗体価と症状の相関は認めず,くり返し生じる再燃時に抗体値の上昇は認められなかった。
  • 壽 順久, 室田 浩之, 小豆澤 宏明, 片山 一朗
    2009 年 8 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    62歳,男性。両側前腕と下腿を中心に四肢近位側にかけて連続性に光沢を有する皮膚の硬化があり,腹部および腰部にも一部斑状の皮膚硬化を認めた。また,手指関節および肘,膝関節の可動域の制限や下腿,頭髪および腋毛の脱毛を伴っていた。臨床検査では好酸球増多と高γグロブリン血症,抗核抗体陽性,可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)の上昇を認めた。病理組織学的には筋膜への好酸球浸潤と筋膜の肥厚を認め,好酸球性筋膜炎と診断した。文献的には全身性強皮症において脱毛の報告があるが,好酸球性筋膜炎における脱毛の報告はなく,若干の考察を加えて報告する。
  • 寺田 麻衣子, 小川 晴子, 田邉 洋, 望月 隆, 上野 正克, 永石 彰子, 松井 真
    2009 年 8 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    66歳,男性。飲酒歴なし。2004年9月(65歳時),胃癌による噴門側胃切除術を受けた。2006年2月より歩行困難と四肢のミオクローヌス,せん妄が出現した。3月より両手背に皮疹が生じた。神経症状は徐々に進行したため,5月に当院の神経内科に入院した。その際,皮疹の評価を目的に当科を紹介された。初診時,両手背と足趾にそう痒を伴う赤褐色の紅斑と手指関節背面に深い亀裂を認めた。その他,顔面や頚部には皮疹を認めなかった。神経学的にはミオクローヌスとせん妄があり,その他,下痢と大球性貧血を合併しており,皮膚症状とあわせてペラグラと診断した。血清ニコチン酸が軽度低下しており,ニコチン酸アミド100mg/日を経静脈的に投与したところ,症状は劇的に改善し,約2週間後には皮疹は消失し,日常会話が可能となった。
  • 庄野 又仁, 中森 利枝, 三木 綾子, 山本 維人, 土居 敏明
    2009 年 8 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    43歳,男性。左眉毛外側端の径2cm大の類円形で軽度隆起する紫褐色皮膚病変の精査目的で近医より紹介された。臨床所見およびダーモスコピー所見にて扁平苔癬様角化症が最も疑われた。病理組織学的に苔癬型組織反応を認め,同症と診断した。液体窒素による凍結療法を実施し,皮疹は消褪した。
  • 北村 真人, 藤井 紀和, 高橋 聡文, 藤本 徳毅, 植西 敏浩, 田中 俊宏
    2009 年 8 巻 2 号 p. 192-197
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    73歳,男性。数年前より右大腿後面に紅斑が生じた。受診時,右鼠蹊リンパ節の腫脹と右下肢腫脹があった。全摘標本の病理組織では表皮内に汗孔腫細胞(poroma cell)からなる胞巣がみられ,一部に好酸性物質で裏打ちされた管腔構造も伴っていた。真皮浅層には異型を伴った細胞が不整に浸潤し,リンパ管侵襲も生じていた。FDG-PET-CTにて多発性のリンパ節転移がみられた。エクリン汗孔癌,pT1N1M1=stageIVと確定診断した。化学療法を施行したが治療抵抗性であり,腫瘍マーカーのSCC関連抗原も上昇して初診9ヵ月後に永眠した。病理解剖では多発性のリンパ節転移に加え,両側腎,両側肺,肝両葉,胆嚢,膵臓,脊椎,ダグラス窩に転移がみられた。
  • 加藤 威, 藤本 徳毅, 植西 敏浩, 田中 俊宏
    2009 年 8 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性。20年ほど前より陰茎に皮下腫瘤があり,増大してきたため当科を受診した。局所麻酔下に切除したところ,真皮内に嚢腫が2つ見られた。嚢腫壁は重層扁平上皮と立方上皮により構成されており,陰茎縫線嚢腫と診断した。陰茎縫線嚢腫の発生原因は現在まで不明であるが,自験例のように放置していた腫瘤が経過途中から増大することから,この腫瘤の形成には二次的な要因が関与している可能性があると考えた。また陰茎に嚢腫を生じる疾患は他に傍外尿道口嚢腫があるが,縫線部の嚢腫では壁が円柱上皮や扁平上皮からなる一方,外尿道口周囲の嚢腫では扁平上皮が壁にみられた報告は少なく,この二疾患の差異について検討を要すると考えた。
  • 三宅 宗晴, 遠藤 英樹, 東森 倫子, 吉田 益喜, 川原 繁, 川田 暁, 安田 滋, 吉岡 啓子
    2009 年 8 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    83歳,男性。平成17年春頃より,外陰部と左腋窩の皮疹に気づいたが放置していた。平成18年8月近医皮膚科を受診し,生検により2ヵ所とも乳房外Paget病と診断され,当科に紹介された。外陰部と左腋窩に比較的境界の明瞭なびらんを伴った紅褐色隆起性病変を認め,外陰部では一部で腫瘤が乳頭腫状に増殖していた。外陰部と左腋窩の病変はともに病理組織検査で表皮内に大型で胞体の明るいPaget細胞がみられ,外陰部の病変では真皮内へ浸潤していた。腫瘍より3cm離して拡大切除術を施行した。術後15ヵ月を経た現在,局所再発やリンパ節転移を認めず,経過観察中である。
  • 野田 智子, 鵜飼 恭子, 浅井 純, 西藤 由美, 竹中 秀也, 岸本 三郎
    2009 年 8 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    73歳,女性。約8年前より右頬部に褐色斑を認めていた。1999年11月に近医形成外科を受診し,同部位にレーザー治療を受けた。翌年3月頃より同部位に黒褐色斑が再発して徐々に色調が増強し,範囲が拡大したため当科を受診した。生検の結果,悪性黒色腫と診断した。全摘術施行後,インターフェロンβ局注を行った。術後2年6ヵ月経過した現在,局所再発や転移を認めない。色素性病変に対してレーザー照射を行う際には生検を施行するなどして,慎重に行うことが望ましいと考えられた。
  • 楠谷 尚, 加茂 理英, 上奥 敏司, 曽和 順子, 井上 敦司, 上原 慎司, 石井 正光
    2009 年 8 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    55歳,女性。出生時より左乳房から胸骨部にかけて色素性母斑が存在した。当科に受診する約1ヵ月前に母斑内に約5mmの腫瘤形成を認め,徐々に増大してきた。さらに左腋窩に皮下腫瘤を自覚して前医を受診し,当科に紹介された。リンパ節転移を伴う悪性黒色腫と診断し,母斑を含めた腫瘍切除術と腋窩リンパ節郭清術を施行した。術後約1ヵ月の経過で骨転移を認め,さらに肺転移と肝転移を生じ,初診より約4ヵ月で永眠した。先天性色素性母斑のうち,巨大先天性色素性母斑では幼少時に悪性黒色腫が発生することがよく知られている。小型から中型の先天性色素性母斑では思春期以降に悪性黒色腫発生があるとされ,予防的切除が推奨されている。自験例は母斑表面に疣状変化が強く,腫瘤形成に気づきにくかったことや,女性の乳房に母斑が存在したことによる羞恥心から医療機関の受診が遅れ,急速な転帰をとったと推測した。先天性色素性母斑を診察する際において,サイズにより悪性黒色腫が発生する頻度や時期が異なることから,先天性色素性母斑の治療時期や内容についての適切な患者への説明と指導が必要と考えた。
  • 上中 麻希, 沼尻 敏明, 西野 健一, 素輪 善弘, 小森 敏史, 北嶋 渉, 花田 圭司, 小西 啓介
    2009 年 8 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳,男性。アルコール多飲歴とアルコール性肝障害の既往がある。身体所見や画像所見上,項部や両肩甲部,腰部に両側対称性びまん性に広がる脂肪塊を認めた。臨床像より多発性対称性脂肪腫症と診断した。項部と腰部について全身麻酔下に摘出術を行った。項部は脂肪吸引を用いたが,脂肪塊は線維質と血流に富んで破砕しがたく,吸引は困難であった。腰部では内視鏡補助下に行い,術野をモニターで確認することができ安全であった。また切開を最小限とすることができ有用であった。
  • 山本 哲久, 里 美佐子, 大槻 真弓, 瀬戸 英伸, 岩井 泰博
    2009 年 8 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    生後2日,男児。出生時より,後頚部に25×20mm大の暗赤色の腫瘍を認めた。MRIにて線維性腫瘍が疑われた。病理組織学的所見では,紡錘形の核を有する細胞と類円形の細胞が膠原線維を交えながら不規則に増殖する腫瘍を認めた。免疫組織染色にて紡錘形の細胞はα-smooth muscle actinとvimentin染色に陽性であり,Azan-Mallory染色で青染し,経過とあわせて乳児筋線維腫症孤発型(infantile myofibromatosis solitary type)と診断した。乳児筋線維腫症は幼少期より見られる比較的稀な腫瘍で,自然消退することも報告されている。自験例でも経過観察を行っており,腫瘍は縮小傾向である。
  • 中富 瑠璃子, 小森 由美, 岸本 三郎
    2009 年 8 巻 2 号 p. 228-231
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    69歳,男性。初診の数ヵ月前から上背部皮膚に紅色の腫瘤が出現し,次第に増大してきた。組織学的所見では好酸性の細胞質と類円形の核をもつ腫瘍細胞が真皮中層から深層にかけて均一に増生している像がみられた。免疫染色ではvimentinとα-smooth muscle actinに陽性であり,von Willebland factorやCD31,CD34には陰性であった。以上よりGlomus腫瘍と診断し,後日手術創周囲より1cm離して筋膜上で完全切除した。術後1年経過した現在,再発は認めていない。
  • 松尾 智央, 堀尾 武, 足立 由香, 長澤 智彦, 岡本 祐之
    2009 年 8 巻 2 号 p. 232-237
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    症例1:59歳,男性。初診の7ヵ月前より腋窩と鼠径部にそう痒を伴う皮疹が出現し,しだいにそう痒が増強してきた。近医にて加療されたが改善しないため当科を受診した。腋窩と鼠径部,臍部,乳輪部に浸潤を触れる褐色の丘疹と結節があり,生検にて真皮上中層を中心に下層にいたるまで血管周囲と附属器周囲に大型の異型リンパ球の浸潤を認めた。免疫染色にて大型の異型リンパ球はCD30が陽性であった。TCRの遺伝子再構成は認めず,HTLV-1は陰性であった。リンパ腫様丘疹症と診断し,入院の上内服PUVA療法を施行した。4J/cm2を14回照射したところ略治した。症例2:38歳,女性。14歳頃より右前腕に皮疹の出没を繰り返していた。20歳頃より症状が増悪し,初診の1年前に他院での皮膚生検にてリンパ腫様丘疹症と診断され,外用剤により加療されていたが軽快しないため,光線療法を目的に当科を紹介された。入院の上,内服PUVA療法を施行し,3J/cm2を8回,4J/cm2を20回照射したところ皮疹は略治した。内服PUVA療法は本症に有用な治療法と考えられる。
  • 前田 七瀬, 猿丸 朋久, 木嶋 晶子, 吉田 直美, 西野 洋, 片岡 葉子
    2009 年 8 巻 2 号 p. 238-243
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    39歳,男性。重症アトピー性皮膚炎で当科を紹介され受診した。その数日後より手関節背側に小膿疱が多発し,39℃の発熱と全身の倦怠感や食欲低下,頚部痛も生じ, 緊急入院となった。入院時,両手の腫脹が著明で,両手背を中心に全身にびらんと痂皮が多発しており,肝機能障害や腎機能障害も認めた。 皮膚からの細菌培養によってA群溶連菌が陽性であったが,咽頭からの培養では陰性であった。重症A群溶連菌性膿痂疹と診断し,安静とFMOX投与により解熱し,全身症状も皮膚症状も速やかに改善したが,手指と手背の腫脹および関節可動域の制限が残存した。リウマチ熱の診断基準は満たさず,A群溶連菌感染後に続発した関節炎(poststreptococcal reactive arthritis:PSRA)と診断した。プレドニゾロン30mgの内服を開始したところ徐々に軽快した。溶連菌性咽頭炎後のPSRAは周知であるが,A群溶連菌性膿痂疹後のPSRAの報告はまれである。
治療
feedback
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