2009 年 8 巻 5 号 p. 561-565
80歳,男性。1年前より徐々に鼻の腫大が進行しているため2007年6月に当科を受診した。初診時はIII度の酒さを疑って加療を開始したが,改善なく腫瘤部に軟化部位を認めた。軟化部位の病理組織で扁平上皮癌と診断し,表皮との連続性がないことより転移によるものと考えた。副鼻腔造影CTで腫瘍は鼻背部と,鼻腔内では篩骨洞および前頭洞まで浸潤していた。進展範囲より鼻腔が原発と診断し,原発巣の発見に先行して皮膚浸潤を呈した鼻腔癌,病期IV A(T4a,Nx,M0)として化学療法(CDDP,THP)および放射線療法を開始したが,認知症の悪化により治療継続は困難となり中止した。鼻腔癌の皮膚転移は稀であり,早期診断は困難であるため適切な検査と皮膚生検が行われるべきである。