37歳,男性の右腋窩に生じた悪性淡明細胞汗腺腫(malignant clear cell hidradenoma)の1例を報告した。平成18年春頃より右腋窩に徐々に拡大する腫瘤を自覚し,平成20年2月初旬より急速に拡大してきたため,平成20年4月1日近医皮膚科を受診し,皮膚生検により汗腺癌を疑われ,同月21日当科を紹介され受診した。受診時右腋窩に10×8cm大の,一部びらんと出血を伴う紫紅色調の硬性硬の皮膚結節を認めた。5月20日に拡大切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行した。病理組織では線維性被膜に覆われた境界明瞭な腫瘍塊であり,好塩基性および明るい胞体を有する細胞の混在した異型な腫瘍細胞により構成され,不整な腺腔構造の形成を認めた。また,一部では壊死と出血を伴っておりmalignant clear cell hidradenomaと診断した。病期は有棘細胞癌の分類に準じT3N1M0, stageIIIとした。術後放射線42Gy照射を行ったが同年10月に多発性の肺転移を,11月に多発性の肝転移を認め,翌年1月骨転移による両下肢完全麻痺をきたし,2月に永眠した。本症は遠隔転移を来しやすく有効な補助療法が確立されていないため予後不良とされている。これまでの報告例と比較して自験例は若年であり,原発巣が巨大であったと考えられる。
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