皮膚の科学
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8 巻, 5 号
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カラーライブラリー
研究
  • 清水平 ちひろ, 江川 裕美, 近藤 摂子
    2009 年 8 巻 5 号 p. 527-533
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    2008年4月から同10月までの当院入院症例のうち,疥癬40例に対してイベルメクチン投与と安息香酸ベンジルオイラックス外用を行った。全例が65歳以上であった。イベルメクチン投与中および投与後に有害事象を認めた症例は臨床検査値異常が5例,基礎疾患によると考えられる死亡例が2例あった。このうち臨床検査値異常の5例はいずれも無治療で正常化した。軽度の肝障害を認めた2例に対してもイベルメクチンの内服治療を行ったが,投与後に臨床検査値の悪化は認めなかった。投与回数については疥癬のライフサイクルからは少なくとも2回の投与が望ましいと考えられた。しかし,2回で治癒した例は71%に過ぎず,12例で3回以上の投与を必要とした。疥癬の集団発生では,当院のような高齢者症例の多い場合でも積極的な内服加療が有効であり,比較的安全に使用できることが確認された。
症例
  • 福井 奈央, 櫟原 維華, 落合 宏司, 大津 詩子, 森脇 真一
    2009 年 8 巻 5 号 p. 534-539
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    症例1:30歳,男性。発熱と頭痛,意識障害を認めたため,当院脳神経外科に入院し,髄液検査や頭部MRI所見からウイルス性脳炎と診断された。発熱と同時期に両下腿に浸潤を触れる紅斑が出現した。症例2:19歳,男性。Sjögren症候群にて当院膠原病内科に通院中であったが,発熱と嘔吐,下痢を認めたため,同科に入院となった。入院時,両下腿伸側や背部,顔面に有痛性紅斑を認めた。入院5日後,頭痛が出現し,髄液検査と頭部MRI所見より無菌性髄膜炎と診断された。両症例とも紅斑の病理組織にて脂肪中隔に主としてリンパ球の浸潤がみられたため,結節性紅斑と診断した。結節性紅斑が脳炎や髄膜炎に合併した機序として,ウイルス感染に対するIII型またはIV型アレルギーが考えられた。
  • 後藤 和仁, 柴田 真一, 鎌田 聡, 富田 靖, 中山 敏
    2009 年 8 巻 5 号 p. 540-545
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    症例は70歳男性,治療に難渋した慢性放射線皮膚炎の一例を報告した。28歳時に下垂体腫瘍にて放射線照射を受けた。42年後に額部の瘢痕に潰瘍が出現し,有棘細胞癌を疑った。全摘を行い,組織標本で石灰様物質の沈着を認めたが,悪性所見はみられなかった。組織の変性は骨膜まで及び,再建治療に難渋した。
  • 山本 篤志, 後藤 典子, 神吉 晴久, 堀川 達弥, 錦織 千佳子
    2009 年 8 巻 5 号 p. 546-550
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    71歳,女性。左顔面の有棘細胞癌に対して全摘術を施行した。術後,抗生剤としてセフタジジム(モダシン®)およびクリンダマイシン(ダラシン®)を投与したところ,投与後4日目に背部に無症候性の紅斑が出現した。8日目には全身に拡大し,間擦部には小膿疱が集簇してみられた。同時に38℃台の熱発と著明な乏尿を認め,血液検査では白血球とCRP,BUN,クレアチニン値の上昇を認めた。抗生剤をメロペネム(メロペン®)に変更後3日で熱発と乏尿は改善し,約10日で皮疹は検査所見とともに改善した。DLSTはモダシン®とダラシン®とも陽性であり,パッチテストはダラシン®で陽性であったことから,モダシン®およびダラシン®による急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthenmatous pusutulosis:AGEP)および急性腎障害と診断した。
  • 道上 幹子, 松村 由美, 是枝 哲, 宮地 良樹
    2009 年 8 巻 5 号 p. 551-555
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    29歳,男性。顔面にかゆみを伴う丘疹が多発した。近医にて尋常性ざ瘡や接触皮膚炎として治療を受けたが無効だったため,当院を紹介され受診した。顔面には一部に膿疱を混じる毛孔一致性の丘疹が多発していることより,好酸球性膿疱性毛包炎を疑った。しかし環状分布や遠心性拡大を認めず,かゆみが非常に強いことから,HIV関連性好酸球性毛包炎を考え,HIVの検査を行ったところCD4陽性T細胞の著明な低下を伴うHIV感染が判明した。免疫低下に伴う合併症は他に認めなかった。
  • 田中 かおる, 矢島 智子, 種村 篤, 谷 守, 片山 一朗, 松本 千穂
    2009 年 8 巻 5 号 p. 556-560
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性の右腋窩に生じた悪性淡明細胞汗腺腫(malignant clear cell hidradenoma)の1例を報告した。平成18年春頃より右腋窩に徐々に拡大する腫瘤を自覚し,平成20年2月初旬より急速に拡大してきたため,平成20年4月1日近医皮膚科を受診し,皮膚生検により汗腺癌を疑われ,同月21日当科を紹介され受診した。受診時右腋窩に10×8cm大の,一部びらんと出血を伴う紫紅色調の硬性硬の皮膚結節を認めた。5月20日に拡大切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行した。病理組織では線維性被膜に覆われた境界明瞭な腫瘍塊であり,好塩基性および明るい胞体を有する細胞の混在した異型な腫瘍細胞により構成され,不整な腺腔構造の形成を認めた。また,一部では壊死と出血を伴っておりmalignant clear cell hidradenomaと診断した。病期は有棘細胞癌の分類に準じT3N1M0, stageIIIとした。術後放射線42Gy照射を行ったが同年10月に多発性の肺転移を,11月に多発性の肝転移を認め,翌年1月骨転移による両下肢完全麻痺をきたし,2月に永眠した。本症は遠隔転移を来しやすく有効な補助療法が確立されていないため予後不良とされている。これまでの報告例と比較して自験例は若年であり,原発巣が巨大であったと考えられる。
  • 早石 祥子, 猿喰 浩子, 宮口 衛, 高松 紘子, 大畑 千佳
    2009 年 8 巻 5 号 p. 561-565
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/22
    ジャーナル 認証あり
    80歳,男性。1年前より徐々に鼻の腫大が進行しているため2007年6月に当科を受診した。初診時はIII度の酒さを疑って加療を開始したが,改善なく腫瘤部に軟化部位を認めた。軟化部位の病理組織で扁平上皮癌と診断し,表皮との連続性がないことより転移によるものと考えた。副鼻腔造影CTで腫瘍は鼻背部と,鼻腔内では篩骨洞および前頭洞まで浸潤していた。進展範囲より鼻腔が原発と診断し,原発巣の発見に先行して皮膚浸潤を呈した鼻腔癌,病期IV A(T4a,Nx,M0)として化学療法(CDDP,THP)および放射線療法を開始したが,認知症の悪化により治療継続は困難となり中止した。鼻腔癌の皮膚転移は稀であり,早期診断は困難であるため適切な検査と皮膚生検が行われるべきである。
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