1986 年 28 巻 3 号 p. 350
水銀体温計破損時にみられる間接部位に好発する境界鮮明な潮紅局面は熱態と軽度の痛痒さを伴ないかなり特徴的なものであるが, その発症に間しては, 1) 室内に立ち込めた水銀蒸気の吸入により全身循環を介しての血行性接触皮膚炎, 2) 接触部位からの経皮吸入された水銀が同様のメカニズムで反応を起すことの2つがあることを自験例で示すとともに, 実験的に常温の室内に落した水銀滴によって10-20分以内に至死量ともいえるだけの金属水銀気中濃度となることも明らかにし, 1), 2) の説の妥当性を主張した。もう1つの可能性として考えられる直接性の接触皮膚炎とは臨的床に別のものと現在の知識では判断している。局所には電顕的に水銀的の局在は証明しえなかった。