1989 年 31 巻 2 号 p. 192-198
54歳, 男。初診の5日前に体幹, 上肢に掻痒性皮疹が出現し, 徐々に拡大した。初診時, ニコルスキー現象陽性。病理組織所見では表皮の変性, 壊死が認められ, TENと診断した。プレドニン60mg内服にても表皮剥離びらんは徐々に拡大したため, プレドニン80mg点滴投与としたところ, 皮疹の新生は止まり, びらん面は急速に上皮化した。発症前に, 原因と思われる薬剤の内服は一切しておらず, 自験例は非薬剤性のTENと診断した。その他の病因の検索はしていないため, はっきりした原因は不明である。自験例のような非薬剤性の症例は, TENの治療や発症機序を検討するうえで, 興味ある症例と考え, 若干の考察を加えて報告した。