1996 年 38 巻 6 号 p. 585-589
トフィソパム (グランダキシンR) による多発性固定薬疹の本邦第1例を報告する。患者は84歳の女性であるが, トフィソパム内服後, 体幹・四肢に手掌大までの紫紅色紅斑と水疱が多発した。皮疹の出現と共に8年前より存在していた口腔及び結膜の乾燥症状が増悪し, さらに心外膜炎による心不全症状の出現を認めた。抗核抗体・抗SS-A抗体陽性所見, 小唾液腺の病理組織学的検査所見より, Sjogren症候群の診断が確定した。sicca症状と心外膜炎症状は皮疹軽快後増悪したまま持続し現在に至っている。トフィソパムの十分の一常用量内服にて, 皮疹消退後の色素沈着部に皮疹が再燃した為, トフィソパムを原因薬剤と同定した。薬疹発症とともに既存の膠原病の症状が増悪したという報告はまれなものと考え, 報告した。