バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
股関節回転中心に関する人体下肢慣性モーメント(I_O)の推定値について : その2
林 道夫Kazuhisa TakahashiTadao Murata
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1978 年 2 巻 1 号 p. 8-12

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抄録
与えられた身長と体重から妥当を精度で人体下肢慣性モーメントを推定することが出来れば、臨床的生体計測値の検証に便利である。そこで、その1で示したDEMPSTERの8死体16肢の測定値を用いて、線形および非線形回帰の分散分析を行った。分散分析表は表1に示してある。1変数による線形回帰モデルでは、身長をパラメーターにした方がやや標準誤差が小さいが、身長と体重をパラメーターとする多重線形回帰モデルを用いると、標準誤差は更に有意に改善される(P<0.05)補間法に限定すれば3次回帰モデルが最小の標準誤差を示すが、分散分析の結果では多重線形回帰モデル(f)に対し有意差はない。モデル(e)は誤差の限界±0,5gで体重を測定したものであるが、モデル(f)では±500gに丸めてある。従ってモデル(a),(b),(c)と(e)は利用価値がない。モデル(d)は補間法の範囲内で最良の標準誤差2.6×10^3g・cm・sec^2を示す。3次回帰モデル(d)を補外法に用いると表2に示したように、体格の小さい者ほど極端にI_Oが大きくなり不合理である。その場合は多重線形回帰モデル(f)を用いるのがよい。モデル(f)は補間法の範囲内では、モデル(d)と有意差のない標準誤差2,8×10^3g・cm・sec^2で慣性モーメントの推定が可能であり、補外法の場合もモデル(f)に比べはるかに誤差が少いと推定される。回帰曲線と回帰平面の係数は本文中に示したとおりである。
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© 1978 バイオメカニズム学会
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