バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
解説
高齢者のバイオメカニズム
—骨の老化—
岩本 潤
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2003 年 27 巻 1 号 p. 15-17

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抄録

骨の老化において特徴的なのは骨量の減少と易骨折性である. 加齢に伴う骨量の変化には男女差がみられる. 男女とも30歳代で最大骨量に達した後, 男性では加齢に伴い骨量は緩やかに減少するのに対し, 女性では特に閉経後に骨量は数年の間著明に減少した後, 緩やかに減少する. 加齢に伴う骨量の減少は, 長管骨の皮質骨よりも, 脊椎の海綿骨の方が著明である. 高齢者では加齢に伴う海綿骨量の減少量に男女差はないものの, 女性では骨形成の低下よりも骨吸収の増加が著明なため, 主として骨梁が穿孔されることにより骨梁の連結性が失われるのに対し, 男性では骨吸収の増加よりも骨形成の低下が著明なため, 主として骨梁幅が減少する. 長管骨の皮質骨では, 加齢により内骨膜面と皮質骨内ハバース管での骨吸収の増加により骨髄腔は拡大し, 皮質骨内部の粗鬆化もみられる. 高齢者では加齢に伴う内骨膜面での骨吸収は男女ほぼ同程度であるにも関らず, 外骨膜面での骨形成は男性より女性の方が少ないことから, 加齢に伴う皮質骨量の減少量は男性より女性の方が大きい. したがって, 海綿骨と皮質骨の両者を含めた骨量の減少は男性より女性の方が大きい. 脊椎·長管骨とも, 生理的な老化に伴う骨量減少を基盤に, カルシウムの摂取不足および吸収の低下, ビタミンDの吸収および産生の低下, 二次性副甲状腺機能亢進症, ホルモンの分泌低下, 運動量の減少, 老化遺伝子などの多元的な要因が加わることにより骨粗鬆化が進行し, 骨量がある程度まで減少すると軽微な外力で骨折が生じる.

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© 2003 バイオメカニズム学会
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