2003 年 1 巻 p. 123-132
原子力発電や災害等の様々な社会的リスクに対する人々の認識や態度についての諸研究の中で,近年ではリスク管理者に対する "信頼" の重要性が繰り返し指摘されている.この背景から本研究ではリスク管理者に対する信頼に関わる仮説を提案し,それを,2002年9月に発覚した原子力発電所の炉心シュラウドのひび割れ隠蔽問題の前後に,当該電力会社の電力供給地域の世帯を対象に実施したパネルデータ(n = 200)を用いて検証した.分析より,シュラウド問題によってリスク管理者に対する信頼が低下する,それに伴って原子力発電所を政府がより強く管理することを求める傾向が向上する,ただし,問題後の対応が誠実であったと認識した場合には信頼の低下は生じない,という仮説がそれぞれ支持された.