抄録
ブラックホールに関連した興味深い現象にHawking輻射がある。ブラックホールは物を吸い込むだけではなく輻射をだしているというHawkingの指摘以来、精力的に研究がなされてきた。しかしながら、現実のブラックホールから見積もられるHawking輻射の温度はせいぜい数10nK程度であり、観測はほとんど不可能である。このHawking輻射という現象を、流体のアナロジーを用いて検証しようという試みがある。特に、冷却原子系のBose-Einstein凝縮体を用いることでHawking輻射の物理を検証できる可能性がある。この稿では、そのような試みの定式化と数値シミュレーション結果について紹介する。