2012 年 119 巻 4B 号 p. E67-E75
我々は、エネルギー依存性を非局所化したクォーク模型核子間相互作用fss2を核子-重陽子(Nd)弾性散乱に適用し、低エネルギー領域での物理量である三重陽子の結合エネルギーや中性子-重陽子(nd)有効距離パラメータ及び低エネルギー微分断面積が三体力を導入することなくほぼ再現されることを示した。我々は、screened Coulomb forceを用いた新しいクーロン力の取扱いを開発し、豊富な陽子-中性子(pd)散乱データとの詳細な比較、検討を通じて、このエネルギー領域では、三体力よりクーロン力の方が重要であることを示した。従来から問題であった25MeV以下の入射エネルギー領域での核子と重陽子の偏極分解能(A_y(θ)とiT_<11>(θ))の最大値については、AV18等の中間子交換ポテンシャルによる計算結果からのかなりの改善が得られたが、10MeV以下のエネルギー領域では、依然20%程度の差異が特にpd散乱のA_y(θ)において存在する。更に,より高いエネルギー領域(65MeV以下)では、nd,pdの観測量は非常に良く再現される。