2012 年 119 巻 4B 号 p. E155-E162
時間依存Hartree-Fock法(TDHF)を用いて、核子移行反応の断面積を調べる方法について考察を行う。このためには、ある入射パラメータの衝突に対し、移行核子数毎の反応確率を求めることが必要となる。従来、多価イオン衝突で起こる電子移行反応に対し、反応確率を計算する方法が知られている。一方、昨年、Simenelにより粒子数射影演算子を用いた方法が提案された。両者が等価であることは、解析的に示すことができる。本稿では、Skyrme相互作用SLy5を用いた^<40>Ca+^<124>Sn原子核衝突のTDHF計算によって得られた核子移行反応確率及び核子移行反応断面積の計算結果を示し、実験値との比較を行うことにより、TDHFの多核子移行反応への適用可能性について述べる。