抄録
本稿では、単身 ALS 患者の入院から在宅移行の実態を通して、介助体制再構築の支援課題を明らかにした。研究方法:単身の 60 代男性 1 名の入院生活から在宅移行支援を参与観察し、2008年 6 月 12 日~2008 年 7 月 13 日の記録より支援経過をまとめた。結果:入院から 1 ヶ月を経過して提出されたケアプランは入院前のものとほとんど変わらず、介護保険しか使われていなかった。支援者は障害福祉サービスの情報提供、重度訪問介護の受給とケアプラン作成のための関係機関への連絡補助を行ったが、障害の認定調査から区分判定までに 2 ヶ月かかり、その間に単身 ALS 患者の病状は進行していた。また、気管切開をしていないことから障害福祉サービスは必要ないと判断され、夜間に重度訪問介護を組み込んだケアプランは、引き受ける事業所そのものがないことから不可能とされていた。病院から退院を迫られる中、支援者が重度訪問介護を提供する介護事業所とヘルパーを探すことで、障害福祉サービスを併用するケアプランの実現性が高まり、医師の意見書によって認められたが、介助体制の再構築には 3 ヶ月ほどの時間がかかった。