「事実」と「意見」の区別は重要視されているが,従来の区別の基準で「事実」と「意見」を明確に区別することは難しい。従来,書き手/話し手がどのような目的で述べたのかという観点は十分に検討されてこなかった。そこで,本稿では,発話行為論における適合方向性の概念を踏まえ,「事実として述べた文/発話」と「意見として述べた文/発話」を定義した。「言葉を世界へ」という適合方向を持つ,書き手/話し手が真であると思い述べた文/発話は,「事実として述べた文/発話」である。「世界を言葉へ」という適合方向を持つ,書き手/話し手が読み手/聞き手の信念を変化させようと述べた文/発話は,「意見として述べた文/発話」である。