読書科学
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原著論文
成人はどのように図書を探索しているか
読書者と不読書者の情報参照傾向および図書探索志向性に着目した検討
小野田 亮介
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2023 年 64 巻 2 号 p. 53-68

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抄録

 本研究の目的は,日本の成人による図書探索の特徴を明らかにすることである。予備調査では,大学生(n=209)に本の選び方に関する自由記述を求め,図書探索で参照する24の情報源と,図書探索志向性を測定する項目を抽出した。研究1では,大学生を含む成人(n=346)を対象とした調査を実施し,図書探索において外的指標を重視する「レビュー参照志向」と,直感や偶然性を重視する「セレンディピティ志向」の2因子から構成される図書探索志向性尺度を作成した。研究2では,750名の成人を対象として(1)図書探索における情報参照と,(2)図書探索志向性の傾向が読書行動といかに関連しているかについて,読書者と不読書者の対比による検討を行った。分析の結果,成人は本の内容に関する情報源と,本との出会いの偶然性を重視して図書を探索していることが明らかになった。また,図書探索において偶然性を重んじるセレンディピティ志向性が読書行動をとる確率を高める可能性も示された。これらの結果から,偶然性や直感に基づく図書探索を支援することが成人の読書行動を促す可能性が示唆された。

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© 2023 日本読書学会
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