日本における論理教育においてしばしば言及される根拠と理由は,実は,学習指導要領上での区別を含め,小・中学校の国語教科書における説明についても現在もなお不明瞭な点が多い。実際,これまでの実践や研究史上でも両概念の弁別が明確に,そして分かりやすい形で説明されたものは少なく,曖昧性を有したままとなっているのが現状である。本稿は,そうした実態に鑑み,学指導要領上の記述及び小・中学校の国語教科書の内容検討を踏まえる形で,根拠及び理由の概念はなぜ理解とその定着に困難を伴うのか,この点を考察することを第一の目的としている。また,両概念を扱う際にしばしば拠り所とされる Toulmin Model との相違に基づき,日本では余り扱われない3要素の意味を検討すること,及び,日本での援用の妥当性を検討することを第二の目的とした。