日本咀嚼学会雑誌
Online ISSN : 1884-4448
Print ISSN : 0917-8090
ISSN-L : 0917-8090
側頭下顎障害患者における咀嚼運動経路のパターンと安定性
三橋 博之志賀 一博小林 義典
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 11 巻 1 号 p. 55-63

詳細
抄録

側頭下顎障害 (TMD) 患者の下顎切歯点の咀嚼運動経路のパターンとその安定性を明らかにする目的で, 正常者とTMD患者各100名のチューインガム咀嚼時の運動経路について, 中心咬合位から作業側に向かってスムーズに開口後, Convexに閉口するパターンI, Iと同様に開口後, COnCaveに閉口するパターンII, 中心咬合位から非作業側に向かって開口後作業側に向かい, convexに閉口するパターンIII, IIIと同様に開口後, concaveに閉口するパターンIV, 作業側へconvexを呈して開口後, 開口路に準じて閉口するパターンV, 開口路の方が閉口路よりも作業側にあるパターンVI, 開閉口路が交叉するパターンVII, 開閉口路が線状であるパターンVIII, I~VIIIに分類できないパターンIXの9種類に分類後, その発現率を両群間で比較した. また, 運動経路の安定性を表す開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分のSD/OD (標準偏差/開口量) を求め, 両群間で比較し, 以下の結論を得た.
各パターンの発現率は, 正常群では, Iが最も高く, IとIIIが全体の69.5%を占めたが, 患者群では, IIIが最も高く, 正常群とは有意に異なる分布を示した. パターンごとにみた開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分のSD/ODは, 正常群の方が患者群よりも有意に小さかった. これらのことから, TMD患者の咀嚼運動経路は, 正常者のそれとは明らかに異なり, 代表的なパターンが存在せず, 種々なパターンを呈し, パターンの違いに関係なく不安定であることが示唆された.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本咀嚼学会
前の記事 次の記事
feedback
Top