日本咀嚼学会雑誌
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咀嚼運動経路における中心咬合付近の閉口路の違いからみた側方咬合位の接触状態
小此木 富美子志賀 博小林 義典
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2001 年 11 巻 1 号 p. 47-54

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抄録
咀嚼運動経路における中心咬合位付近の閉口路が側方咬合位の咬合接触状態によって誘導されるか否かを明らかにする目的で, 正常者50名に片側ごとにチューインガム咀嚼を行わせた100咀嚼側のうち, 下顎切歯点の運動経路のパターンが中心咬合位から作業側ヘスムーズに開口後, convexを呈して閉口する46咀嚼側をI群, 経路の概形がI群と同様であるが, concaveを呈して閉口する12咀嚼側をII群して, 下顎切歯点を中心咬合位から側方へそれぞれ1mm (L1), 2mm (L2), 3mm (L3) 滑走させた側方咬合位の咬合接触状態を側方咬合位間と群間で比較し, 以下の結論を得た.
1. 各側方咬合位における咬合接触歯数は, 作業側, 平衡側ともにL1, L2, L3の順に減少する傾向を示し, 側方咬合位間に高度な有意差が認められた.
2. I群とII群のL1, L3における咬合接触歯数の発現率は, 作業側, 平衡側ともに両群間に有意差が認められなかった.
3. I群とH群のL2における咬合接触歯数の発現率は, 作業側では, 両群間に有意差が認められなかったが, 平衡側では, 両群間に高度な有意差が認められた.
4. 以上のことから, 側方咬合位の咬合接触状態は, 側方咬合位の側方移動距離によって変化するが, I群のがII群よりも少ない歯数に分布し, 特に中心咬合位から側方へ2mm滑走させた側方咬合位で明確なことが明らかになり, この咬合接触状態が咀嚼運動経路の中心咬合位付近の閉口路を誘導することが示唆された.
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