日本咀嚼学会雑誌
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近赤外分光装置によるチューインガム咀嚼時の脳内血流の変化
志賀 博小林 義典荒川 一郎横山 正起
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2004 年 14 巻 2 号 p. 68-73

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抄録

目的: 本研究の目的は, 近赤外分光装置を用いてチューインガム咀嚼時の脳内血流の変化を明らかにすることである.
方法: 20歳代の健常者20名に軟化したチューインガム1枚を1分間咀嚼させたときの両側の脳内血流を記録した.なお, 測定用プローブは, 皮質咀嚼野相当部の皮膚上に設置し, ガム咀嚼は, 主咀嚼側と非主咀嚼側について各1回を被験者ごとにランダムに行った.分析は, はじめに咀嚼前, 咀嚼中, 咀嚼終了1, 2, 3, 4, 5分後の7セッションにおける脳内血流量を測定した.次いで, これらのセッションの脳内血流量について, 経時的変化を調べた後, 脳内血流の変化量について, 主咀嚼側咀嚼時と非主咀嚼側咀嚼時との間で比較した.
結果: 脳内血流は, 主咀嚼側咀嚼時, 非主咀嚼側咀嚼時ともに咀嚼中に増加し, 咀嚼後速やかに減少し, 咀嚼前の状態に回復する経時的変化を示した (主咀嚼側;F=127.0, 非主咀嚼側;F=92.9, p<0.01).咀嚼前と他のセッションの比較では, 咀嚼終了5分後を除くすべてのセッションとの間に有意差が認められた.チューインガム咀嚼時の脳内血流の変化量は, 20例中18例において主咀嚼側咀嚼時のほうが非主咀嚼側咀嚼時よりも多く, 両咀嚼側間に有意差が認められた (t=3.78, p<0.01).
結論: 咀嚼により, 脳が活性化されること, またそれは主咀嚼側咀嚼時のほうが非主咀嚼側咀嚼時よりも強い可能性が示唆された.

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