日本咀嚼学会雑誌
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ナイジェリア人と日本人の歯牙・歯列弓の形態学的相違
水口 俊介米満 正美小野 芳明渡辺 久大沢 孝一大西 正俊窪田 金次郎N.O. HollistA.O. OlusileA.T.I. GrilloS.O. Ajayi-Obe
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1992 年 2 巻 1 号 p. 63-69

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抄録

咀嚼システムの形成・発育に関わると思われる諸要因を検索するため, ナイジェリア連邦共和国において, 過去4回にわたって調査を実施してきた.1991年の最終調査で得られた, ナイジェリア人の歯列模型から, 歯列弓幅径, 歯列弓長径, 歯冠近遠心幅径を計測し, 日本人との比較において, 以下のことが明らかにされた.
1.日本人とナイジェリア人の比較では, 乳歯列弓幅径において, 上顎では男性の犬歯間距離, 下顎では男女, 犬歯間, 第二乳臼歯間両計測値において有意差が認められた.乳歯歯冠近遠心幅径ではおおむねナイジェリア人のほうが大であり, 男性では第二乳臼歯以外の上顎歯と下顎乳犬歯および第一乳臼歯に有意差が見られた.女性では上顎乳中切歯・第一乳臼歯のみ有意差があった.
2.ナイジェリア人永久歯列においては, 男女ともすべての計測項目において日本人より有意に大であり, 特に歯列弓長径において著しい差が認められた.永久歯歯冠近遠心幅径では, ナイジェリア人のほうが日本人より大であり, 有意差が認められたのは女性の全歯種と男性の上顎中切歯・犬歯, 下顎中切歯を除く全歯種であった.またナイジェリア人の永久歯列のArch length discrepancyの平均値は男性で12.0mm, 女性で10.7mmであり, 日本人に比べ, ナイジェリア人のほうが著しく大きく, 空隙歯列である傾向を示した.

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