抄録
本論文は咀噛ロボットの顎関節力を軽減するためのロボット制御手法, シミュレーション結果そしてロボットを用いた実験結果について述べる.われわれは1986年から現在 (92年) までに7個の直流モータ, ワイヤ, 歯科模型, ジュラルミン製の顎骨等を構成要素とする咀噛ロボットWJ (WasedaJaw) シリーズを開発し, 実際に食物を咀噛させることを通して咀噛運動に関する理論的実験的研究を行ってきた.われわれは下顎の運動方程式を導出し, さらに顎関節力を最小とするワイヤ張力の組み合わせを算出することによって, 歯科医学分野でも明確な定説がない顎関節症に対する1つの定量的解答をロボット工学の視点から提案できると考えている.
コンピュータシミュレーションの結果, 咀噛ロボットの顎関節力を軽減するためのワイヤ張力を明らかにし, 実験的にもロボットの顎関節力が軽減することを確認した.