ソシオロジ
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論文
入国管理体制と「外国人」概念
――「日本型排外主義」再考――
朴 沙羅
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2017 年 62 巻 2 号 p. 3-20

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抄録

二〇〇九年以後、日本国内におけるエスニック・マイノリティを標的とした差別扇動表現が、インターネットや街頭で広がっている。このような差別扇動表現に関する社会学的な先行研究は、研究対象を「排外主義」あるいは「排外意識」と措定し、量的・質的な成果を重ねてきた。しかしこれら先行研究は、在日コリアンや在日中国人などの旧植民地出身者に対する差別を「外国人」一般に対する差別、すなわち「排外主義」と見なし、旧植民地出身者がいかなる意味において外国人であるのか、そもそも日本における「外国人」とは何を指しているのかを問うてはいない。本論文は在日コリアンを対象として、彼らがなぜ「外国人」と見なされるようになったのかを、太平洋戦争直後の入国管理体制の成立過程から検討する。朝鮮半島から日本への非正規な移住は、当時まだ日本国籍を保持していた人々を「密航者」「不法入国者」として逮捕し強制的に退去させることを可能にした。それは同時に、国内の在日朝鮮人を「外国人」にすることでもあった。在日朝鮮人の民族運動もまた、自分たちが日本人とは異なる「解放民族」であるという前提に立っていた。これらは全て「外国人」であることの根拠を国籍でも出生地でもなく、出自に求めている。出自に基づく「外国人」たることの根拠は、入国管理体制において戸籍・国籍へ変換される。この差異に基づいている点において、いわゆる「日本型排外主義」は排外主義ではなく人種主義である。この運動が排外主義に見えるのは、日本の入国管理体制とそれが生み出した「外国人」概念の故である。

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