2018 年 42 巻 p. 19-23
リンパ球性下垂体前葉炎は妊娠後期から産後に発症しやすく、頭痛や視野障害を主訴と して発症することが多いとされている。その確定診断は下垂体生検によるが、その侵襲性から下垂 体生検は行わずにステロイド投与を行う例が増えている。今回我々は、産後に持続する嘔気や倦怠 感、食欲不振を主訴とした患者において、臨床所見、下垂体MRI所見、内分泌検査所見からリンパ 球性下垂体前葉炎の可能性を考慮して臨床診断を行い、ステロイド投与で改善をみた一例を経験し た。リンパ球性下垂体前葉炎の診断のためには、まずは本疾患を鑑別にあげることが重要である。 また頭痛や視野障害の他に、嘔気、倦怠感、食欲不振といった非特異的な症状があり得ることを念 頭におく必要がある。本疾患が疑われる症例に対しては早期にMRI検査や内分泌検査を行うことが その早期診断に有用である。