自殺予防と危機介入
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Print ISSN : 1883-6046
シンポジウム 自殺未遂者への精神療法的アプローチ
自殺対策に向けた精神療法の応用(認知行動療法を中心に)
耕野 敏樹中川 敦夫
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2019 年 39 巻 2 号 p. 61-66

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抄録

自殺という現象は多様な要因が複合的に関連し合って生じ、実際の現場で直面する状態や経過に始まり、事象の因果関係を検討する上においても個別性が高く多様な様相を呈する。そのため、この問題に直面する患者と臨床家は初めて遭遇する、慣れない場面への対応を求められるということも多い。その際には緊迫した事態である場合もあり、関係する人自身にも様々な反応が生じ、そのことにも対応が必要となることもある。こうした自明の事実を前提に考えると、自殺対策においてどういった臨床実践を提供するのかどうかを判断していくための材料について吟味することは重要だといえる。

近年、認知行動療法を始めとして自殺対策に有効性が実証されている精神療法が報告されるようになってきている。精神療法では従来より、相談者の全体像を把握し、その上で必要となる対話を支援者が患者と協働して行うということが含まれており、その他にも、研究レベルでは提供する治療の質を担保するためのマニュアルが準備されていたり、スーパービジョンなどの技術を継承するための工夫がされているなど、上述したような問題を解決していく上で参考になる部分も多いのではないかと筆者は考えている。

本稿では、筆者が日頃研鑽を重ねている自殺対策のための認知行動療法をご紹介させていただきながら、精神療法から自殺対策に応用できる部分について検討していきたい。

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© 2019 一般社団法人日本自殺予防学会
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