タイにおける女性経営管理職者のキャリア形成 : その昇進と支援体制

抄録

アジア太平洋諸国のその他の国々と比べたとき,タイの女性の労働力参加率は経済発展の度合いに比してつねに高い。しかし,実業界で管理職者のレベルに女性は多くみられるものの,経営者のレベルでは女性は極めて少ない。本稿は,上場家族所有型企業の取締役と幹部社員(603名)を対象とした調査を基に,タイ女性のキャリア形成に影響を与える要因は何かを分析することを目的とする。つまり,ジェンダー・ギャップ,企業所有家族のメンバーであること(家縁),人的資本(学歴・仕事経験),働く女性の支援体制という4つの要因を取り上げる。支援体制については,法律,家族構成ベービーシッターや家政婦サービスおよび保育所に焦点を当て,聞き取り調査の結果に基づいて現状を考察する。結論としては,タイのビジネス界において,ジェンダー・ギャップが少ないという見方は,たとえ相対的にはそういえるとしても,正確ではないことを見出した。