社会政策
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イギリス従業員代表機関の本格的な導入と労使関係の変化 : 石炭産業の事例研究
木村 牧郎
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2008 年 1 巻 1 号 p. 140-152

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抄録

近年,イギリスではEU指令等の影響により労働組合以外の従業員代表機関の設置が進もうとしている。こうした動きに伴い,企業内における労働組合の役割はどのように変質するのか。現在のところ,労働組合とそれ以外の従業員代表機関が相互に補完的な機能を担う「補完性」が成り立つとの見方が有力である。本稿ではイギリス石炭産業を事例に検証を行った。イギリス最大手のUK Coalでは,2004年に「作業委員会」と呼ばれる従業員代表機関を導入した。他方で,労働組合は従来の団体交渉や労使協議の当事者である。作業委員会の導入前後で交渉や協議の過程を比較したところ,重要な意思決定が作業委員会と経営側との協議を通じてなされる一方,労組との団体交渉や労使協議が形骸化する側面もみられた。従業員代表機関を通じて企業と従業員による緊密な労使関係が築かれ,その一方で団体交渉の分権化が進む場合には,労組の役割が不要となる「代替性」が成り立つ可能性もある。

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© 2008 社会政策学会
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