社会政策
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日本における社会保障概念の確立と近藤文二
―1950年勧告との関連性を中心に―
小野 太一
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2019 年 11 巻 1 号 p. 85-97

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抄録

 本稿は,近藤文二の論考を戦後初期の時代を中心に再検討し,それと社会保障制度審議会の1950年の勧告(1950年勧告)との関連性を追求して,その起草者であった近藤の理論的格闘の姿を論ずるものである。

 まず近藤が1952年の著書で指摘した,社会保障概念に関する論考を概観した。次いで,彼の考える社会保障の範囲の導出過程を,社会政策等に係る系譜的整理に依拠してまとめ,1950年勧告の社会保障概念と比較した。更に1950年勧告に謳われた社会保険中心主義の考え方と,彼の社会保障概念との関係を整理した。そして彼の論考に影響を与えた時代状況を3点指摘した。

 これらにより,①1950年勧告で提示された社会保障の範囲について,1950年代の近藤の論考の含意と,時代状況が要請した現実の必要性が包摂されていたこと,②社会保険中心主義の考え方は,彼自身の理論的視点と整合的なものであったこと,③彼の論考は時代状況に影響されたものであったことが提示された。

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