社会政策
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スイスの第10・11次年金改革における政治的コンセンサス
掛貝 祐太
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2019 年 11 巻 1 号 p. 74-84

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抄録

 本稿の課題はスイスにおいて,1995年に国民投票により採択された第10次基礎老齢・遺族年金(AHV)改正,および2004年に国民投票にて否決された第11次基礎老齢・遺族年金(AHV)改正案の政策決定過程について,制度的・歴史的な考察を試みることである。二つの改革が行われた時期には,90年代初頭からの新自由主義路線の前景化,また90年代末から躍進した極右政党国民党による福祉削減の主張,という福祉削減へと向かう二つの大きな流れがあった。それに反し,年金に関しては,その支出への社会的な合意を維持し続け,第10次改正では世界初の男女平等個人年金を導入するという革新をみせた。なぜこのような社会的合意が可能であったのか,スイスの政治的特徴である拒否権プレイヤーの多さ,党間やアクター間でコンセンサスを重視する政治文化などに注目しながら考察した。第10・11次改正の過程に「イシューの分割」という共通性を指摘し,またその意思決定の変質について考察した。

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© 2019 社会政策学会
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