社会政策
Online ISSN : 2433-2984
Print ISSN : 1883-1850
特集■社会的投資戦略と教育
「つながり」を創る学校の機能
―「人的資本アプローチ」と「地域内蔵アプローチ」―
筒井 美紀
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 12 巻 1 号 p. 55-67

詳細
抄録

 学校の機能というと,人は教育機能(人的資本の蓄積)をまず思い浮かべがちだが,学校は地域社会・労働市場との「つながり」(社会関係資本)を創る機能も担ってきた。教育機会を平等にしても「マシュー効果」は消えないし,ハイテク社会でも低賃金・低スキルに留め置かれる人々が依然必要とされることを考えれば,労働供給サイド偏重の社会投資戦略(ヨーロッパがそうである)の限界は明らかである。したがって,「つながり」を創る機能を重視する「地域内蔵アプローチ」が,とりわけ「課題集中高校」では必要ではないか。すなわち,在学中・卒業後の移行パスを「なだらか」にする,言い換えれば,地域労働市場を参入しやすく留まりやすくしようとするアプローチである。これに関する本稿の,大阪府立西成高校とAダッシュワーク創造館の協働の事例からは,しかし,学校の資源的限界が明らかだ。ゆえに,各スケールでの制度的再調整が不可欠である。

著者関連情報
© 2020 社会政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top