社会政策
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Print ISSN : 1883-1850
小特集 貧困理論と社会規範
貧困理論と差別
志賀 信夫
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2022 年 13 巻 3 号 p. 69-81

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抄録

 本稿は,差別をめぐる規範に着目しながら,貧困理論の歴史展開過程を追っていくことではじめて可能となる問いを立てるとともに,この問いに対する回答を試みる。ここで立てられる問いとは,「貧困理論に積極的差別是正の論理をどうすれば埋め込めるのか,能力主義をどうすれば理論的に克服できるのか」というものである。この問いに回答する過程において,現代の貧困理論の陥穽の原因が,「同格の尊重(parity of esteem)」という観念に対する理論的批判の欠如にあることを明らかにする。そしてそのうえで,この「同格の尊重」という観念を現代的規範に即して「自己決定の尊重」に置き換えて理論展開し,貧困理論に積極的差別是正の論理を内在させていくこと,及び積極的差別是正の実践を後押しすることの必要性について主張する。

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© 2022 社会政策学会
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