ソーシャルワークの実践には権利擁護が求められるが,それが十分に果たせない現状が見られる。本稿では,その要因となる権利侵害を社会構造上の問題から探った。その際に理論的に整理した権利擁護の構成概念を用いて,何が権利侵害であるのか,またそれがどのようにして現れるのかを介護保険サービスと成年後見制度の課題に関する先行研究から分析した。
その結果,サービス供給を担う人材や財源の不足による「社会資源の欠如」が見られた。これらは政策によって進められる介護サービスの市場化や,都市部への人口移動などが影響しており,さらに「我が事,丸ごと」等のスローガンが社会資源の欠如を自助努力のみによる解決を正当化する言説になっているとも考えられる。このような現象をガルトゥングが示した「構造的暴力」に当てはめて検証した。さらに「構造的暴力」が引き起こす権利侵害にこそ社会福祉が擁護する権利があることを示した。