社会政策の基礎には,あるべき社会(=人間関係)についての規範が作用しているが,その規範は社会を構成する人間についての規範(=人間像)と関連している。共通論題では,近代末期(=19世紀末)と現代(=20世紀)の労働と生活の規範に注目して,それが誰/何を社会に包摂しようとし,誰を排除してきたのかを明らかにすることを試みた。本稿はその前提として,いまに先立つさまざまな人間像を概観する。
前近代の主知主義的で非普遍主義の人間像に対して,近世以降,決定論的な主知主義への対抗として主意主義が登場し,また,「自然権」,「人権」,「自由」などの諸概念とともに,「誰もが,いつ,どこで,何をしてもよい」とする普遍主義が徐々に支配的な原理となった。また,近世末期からの人間像の転換(「強く逞しい人間」から「弱く劣った人間」へ)によって,成人男性と成人女性の本質的な相違を主張する根拠が失われたことも普遍主義の制覇に関与していた。