2022 年 14 巻 1 号 p. 24-36
社会政策の規範的目標が市民の自律性と能動性の実現だとすると,福祉国家政策は社会的シティズンシップの上にそれらを実現しようとしていた。新自由主義政策は社会的権利を批判し,自律的市民は能動的に市場で稼得し自助すべきだと主張した。「第三の道」路線は政府の役割を市民が自律的に市場と市民社会に参加できるようにすることと考えた。主流となりつつあるアクティベーション政策は,市民を能動的にすること自体を政策目標として掲げている。その一環であるOECDの教育改革案は,ケイパビリティ・アプローチの影響下でウェルビーイングを達成するためのエージェンシーの涵養をうたっている。ウェルビーイングはコミュニティによって異なるので,社会的な目標としてのウェルビーイングは民主的に決定されるが,それが普遍的な人権と抵触しないよう,個人主義に基づくケイパビリティ・アプローチとシティズンシップ研究とを結びつけた検討が必要である。