2022 年 14 巻 2 号 p. 47-57
本稿は,本小特集の導入として,全体の解明課題,先行研究,分析枠組み,データと方法,若干の論点,に言及する。本小特集の大きな問いに対する暫定解は,以下のようになる。⑴豊中市への来談者は,何らかの事情によってウェルビーイングを叶えにくくなっており,少なくとも客観的には,自己と社会の認識・おくべき価値・生活の送り方の編み直しを必要としている人びとである。⑵提供される相談等サービスが,「適切性と衡平性と敬意のこもった対応」[Lipsky, 2010, 193]だと感知される場合,⒜困りごとが必ずしも解決していなくても,来談者はそこに「ささやかなウェルビーイング」を見出すことがある。この知見は,「伴走型支援」[奥田ほか編,2021]の意義を来談者側から裏書きするものだ。⒝来談者にとって相談等サービスは,「制度的な弱い紐帯」を得る経験となりうる。これは「公共的(行政的)アセット」[宮本,2021]を得ることゆえに重要である。