2023 年 14 巻 3 号 p. 76-85
本稿では,わが国の高齢者・障害者ケアに対する支援制度を概観したうえで,介護保険制度創設前後から現在までの両制度の接近過程をたどり,今後のわが国における高齢者・障害者ケア政策を考える視点を提示した。その結果,①現在,高齢者・障害者ケアは別々の制度であるが,2000年以降の障害者ケア支援制度の変遷において,介護保険制度の仕組みへと接近し,介護保険制度との共通点・類似点が多いこと,②介護保険改正議論では,建前は「制度の普遍化」であるが,真の目的は「制度の持続可能性」という財源確保であり,被保険者・受給者範囲の引き下げが多数の意見を占めるが実現されていないこと,そして,③今後の介護保険制度のサービスを再考する必要があり,高齢者・障害者ケア支援制度の総合的な議論が必要なことを提示した。