2023 年 15 巻 2 号 p. 8-20
本研究は、年金額の男女ギャップが縮小しているにもかかわらず、高齢期の貧困率の男女ギャップが拡大している理由について考察を行う。分析として高齢者における配偶関係別の貧困率を算出し、家族扶養と公的年金による貧困削減効果の検証を試みた。使用データは、1986年から2019年までの「国民生活基礎調査」である。分析の結果、高齢者における貧困率の男女ギャップが拡大した理由は、死別女性の貧困率が高まったことによるが、その死別女性の貧困率の上昇は単身割合が上昇したためであった。次に、所得段階別に貧困率をみると、死別高齢女性にとって、遺族年金による貧困削減効果は1990年代から2000年代にかけて上昇していたが、それ以上に家族扶養による貧困削減効果が低下し、貧困率が上昇していた。そして、2010年代では死別高齢女性本人の公的年金による貧困削減効果も停滞し、可処分所得でみた貧困率の上昇傾向が維持された。