2024 年 16 巻 1 号 p. 50-60
本稿では、障害者の自立生活運動を中心的な対象としつつ、ケアされる側の論理を検証しようとする。ケアというテーマはともすると、ケアする側をめぐるさまざまな問題として整理されがちである。本稿ではケアされる側に立って、障害者たちが求めたケアの到達点と課題について議論する。
まずケアの最初の段階として支援のない状況で専ら家族がケアをするという状況がある。この状況下でのケアは不安定で抑圧的であった。障害者は必要なケアとひきかえに自由を制限され、将来の不安に怯えなければならなかった。この状況は障害者をして入所施設を希望させた。日本の自立生活運動では脳性マヒ者が集住形態での自立生活を模索したが、やがてアメリカの影響を受けた個別的な生活を志向する運動が主流を占めた。しかし、対立があるように見えたとしてもいずれの運動もケアを家族に依存しないことを目指す点でひとつの運動なのである。