家族の変容や女性の労働市場進出などの社会変動に伴い、女性が家庭で伝統的に担っていた育児・介護などのケアを誰が担うのかという問題が、多くの先進国で先鋭化している。本稿は、育児と介護における家族の義務の範囲について、日本とフランス、スウェーデンの3カ国をとりあげ、法が定める義務と、社会規範の二つのレベルから比較分析を行った。
分析からは、育児・介護の「義務」は決して普遍的なものではなく、国により、また時代により変化するものであることが確認された。育児については法律上、いずれの国でも親の義務とされているものの、介護に関しては国により異なることや、社会規範とのズレも見出された。スウェーデンやフランスでは身体的ケアの外部化は進んでも、子から親への情緒的なサポートは弱まっていないとの指摘もあり、身体的ケアの外部化がすなわち親子の絆を弱めるわけではないことを、両国の例は示唆していると考えられる。