社会政策
Online ISSN : 2433-2984
Print ISSN : 1883-1850
特集 ケアをする権利・しない権利:脱・義務的家族介護を目指して
ダブルケアをめぐる優先順位と選択
――量的・質的調査から考える――
相馬 直子
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2024 年 16 巻 1 号 p. 21-34

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抄録

 育児と高齢者介護の重複期は、社会的・人口学的な現象として十分に研究されていないだけでなく、社会政策としても十分に想定されてこなかった。対象別の近代社会政策の非効率や政策不足など、制度がうまく機能していないところのしわ寄せが、ダブルケアに集中している。子育て・介護・医療など、①各制度自体の不足、②制度の非効率(例:個別制度間の連携や柔軟性が低く使いにくい)、③子育てと介護の政策を包含する政策の不足(ケア世帯の困りごとを総合的に相談できる所が少ない等)がある。以上を理解したうえで、ダブルケアラーの「優先順位」や「選択」の困難や葛藤を読み解く必要がある。こうした困難や葛藤の中で、全国各地でダブルケアラーが能動的な主体となり、地域やSNSで当事者ネットワークを作り上げ共同の知恵を生産している。

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