2025 年 17 巻 2 号 p. 118-129
本稿は生活困窮者自立支援制度における就労・訓練機会の開拓を主題とし、特に事業主などの「労働需要側」による事業への関与に注目する。主要な論点は、⑴就労支援事業の対象者・活動内容、⑵事業所見学・実習の位置付けと内容、⑶就労支援担当者の事業主への働きかけの3点である。労働力媒介機関にあたる自治体政策担当者が、タスク環境と経路依存性に埋め込まれたエージェンシーをいかに発揮しているのか、その内実を探る。
主要な知見は以下の通り。⑴就労準備支援事業は就職や就労が特に困難な相談者に対象を絞って実施されている。⑵事業所見学・実習の機会は設けられているが豊富とは言えず、認定就労訓練事業は物理的・心理的障壁によってほとんど活用されていない。⑶就労支援担当者は協力事業所の開拓に困難を抱えているが、過去の活動から得た繋がりや知見、他事業・他部署の資源も活用しながら、事業主の関与を引き出す新たな試みを続けている。