社会政策
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総力戦体制下の「過剰人口」言説
――問題化されつづける農村――
松井 拓海
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2025 年 17 巻 2 号 p. 130-141

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抄録

 本論文では、1920年代後半から戦時期の日本において、「農村過剰人口問題」言説がどのように形成されてきたのかを明らかにすると同時に、「総力戦体制=福祉国家」の成立において、この言説がどのような意義を持ったのかを検討する。主な分析の対象としたのは、人口問題研究会や人口問題研究所の周辺で活躍した人口論者たちの言説である。

 農村の人口増加が直ちに「過剰」を意味するわけではない。20年代後半にはすでに都市への人口流出と農村人口の漸減という事実とは相反するように、農村人口の「過剰」は問題化された。日中戦争が始まり、農村での労力不足や、人口増加の必要性が主張されるようになっても、農村の「過剰人口」は論じられ続けた。このような問題構成により、あらゆる社会問題の原因を農村の人口動態に帰すると同時に、「過剰人口」を都市の外部で処分しようという発想が可能になった。

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